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高知地方裁判所 昭和37年(ワ)329号 判決 1965年11月08日

原告 吉本貞次 外三名

被告 国 外一名

訴訟代理人 杉浦栄一 外五名

主文

原告等の請求を棄却する。

訴訟費用中証人上村一の尋問に要した分は被告国の負担とし、その余は原告等の連帯負担とする。

事  実 <省略>

理由

一、原告等が高知県医務課担当吏員の紹介、あつせんによつて高知市八軒町所在の竹下外科病院跡に校舎を定め、構造設備等について担当吏員と事前に話し合い、かつその指示に基づき修正を重ねた上、昭和三二年一〇月一五日付をもつて、厚生大臣あて高知県指圧学校(晴眼者のためのあんま師養成施設)認定申請書(あんま師、はり師、きゆう師及び柔道整復師学校養成施設認定規則二条に基づく)を高知県知事(県医務課)に提出したこと、高知県知事が右申請書を同月一六日受け付けたこと、申請書はその内容が不備であるとして数回に亘り原告等に返送されたこと、この間原告等が担当吏員に対して同申請書の厚生大臣への進達方を督促したこと、昭和三四年六月一〇日付で申請書が最終的に原告等に返送されたこと、は当事者間に争いがない。

二、<証拠省略>を綜合すれば、次の通り認められる。

本件申請書類の内容と実態の間には被告等主張事実三(四)(イ)(ロ)(ハ)の通りの相違はあつたが、県医務課は原告等が書類返戻の受取を拒み、厚生大臣への進達方を再三に亘り強く要請したにもかかわらず、その進達をせず、認可の見込なしと判断して遂に申謂書類を最終的に原告等に返送したものである。

あんま師の免許を受けるためには、文部大臣または厚生大臣が認定したあんま師養成施設において二年以上修業し、都道府県知事が行なうあんま師試験に合格しなければならないこととされ(あんま師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法二条)、あんま師、はり師、きゆう師及び柔道整復師学校養成施設認定規則二条によれば、右養成施設認定申請は、当該養成施設所在地の都道府県知事を経由して行なうものとされているところ、経由機関である県知事としては、進達に先立ち、担当職員をして、申請内容の実態を調査させ、その補正を指導させることができるのは当然であるが、申請者がそのまま進達することを要請する場合には、その旨及び実態と相違する旨の報告書を付して適時に進達しなければならず、申請者の意思に反して補正を強要し、更には事実上これを却下するようなことは到底許されないものと解せられる。

本件申請書について、前記の通り、県医務課職員が、原告等の意思に反し、厚生大臣への進達を怠たり、約二年後の昭和三四年六月一〇日に至り認可の見込なしと判定してこれを最終的に原告等に返送したことは、実質的な却下処分であつて、故意または過失による違法行為であるといわなければならない(県当局が本件申請書を握りつぶすに至つた根本的理由は、晴眼者のためのあんま師養成施設設立反対の与論のためであつたと推測される。高知県医師会、労働団体が反対意思を表明したこと、教員が辞退し、また無免許業者に対して講習会が開かれたことは、当事者間に争いがないが、原告等主張のように県当局が働きかけた証拠はない)。

本件違法行為によつて、原告等が当初の期待に反し、高知県指圧学校の認定を断念せしめられ、同校が廃校のやむなきに至つたため(原告等は昭和三二年九月頃から開校して授業を行なつていた)、相当の精神的損害を蒙つたことは、容易に推認し得るところであり、被告等は国家賠償法により相当の慰藉料を連帯して支払う義務がある(被告等は被告の違法行為と廃校との間には相当因果関係がないというが、香川県指圧鍼灸学校の昭和三一年九月頃の認定申請についても本件と同様の問題があつたが香川県知事は実態と合致しない旨の報告書を付して進達し、結局昭和三三年春頃認定されるに至つた例があり、従つて、本件においても、担当係官が進達する旨言明し、進達書も起案されているので、そのようにいうことはできない)。

三、しかしながら、<証拠省略>によれば、原告等は、おそくとも昭和三四年八月二六日頃(県厚生労働部長の原告吉本貞次あて二回目の不進達理由回答が同日書留で発信されている)までには、本件違法行為の加害者及び損害を了知していたと推認されるところ、原告等が本訴を提起したときは、既に三年を経過しているから、本件損害賠償請求権は時効によつて消滅している。

四、よつて、慰藉料額を確定するまでもなく、原告等の本訴請求は結局失当に帰するのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九〇条、九三条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 下村幸雄)

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