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鳥取地方裁判所 平成13年(行ウ)1号 判決 2003年7月29日

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告

(1)  被告は,泊村に対し,金500万円及びこれに対する平成11年11月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2事案の概要

1  前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)

(1)  原告は,泊村の住民で,同村議会議員であり,被告は同村の長の職にあって,地方自治法に基づき同村の事務を管理執行する者である。

(2)  被告は,泊村を代表して,平成11年3月30日,A株式会社(以下「A」という。)との間で,泊村を発注者,Aを請負者とする,下記の内容の建設工事請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。

ア 工事名

B団地分譲宅地造成工事(以下「本件工事」という。)

イ 工事場所

東伯郡泊村a(以下「本件現場」という。)

ウ 工期

平成11年3月31日着工,同年7月30日完成

エ 請負代金額

金861万円(うち消費税金41万円)

オ 目的・工事内容

泊村の所有にかかる分譲予定地(砂地)を宅地として造成する工事

(3)  本件請負契約は,その後一部変更され,工期については,平成11年11月20日完成とされた(甲20,弁論の全趣旨)。

(4)  Aは,平成11年11月20日の本件工事完成までに,本件現場から砂1万7144立方メートル(以下「本件砂」という。)を採取・搬出した。

そして,泊村は,本件砂については,これを物品(村有財産)たる「砂」として扱わず,「残土」として扱い,Aの自由処分に委ねた。

(5)  原告は,本件砂の上記取扱いについて,被告が泊村を代表して,本件砂をAに対して無償で譲渡したものであり,その結果,泊村は本件砂の価額に相当する金500万円の損害を被ったとして,泊村監査委員に対し,平成12年11月27日,地方自治法242条1項に基づき,被告に上記金500万円を補填させる措置を求める住民監査請求をした。

これに対し,泊村監査委員は,平成13年1月23日付けをもって,原告の請求を棄却するとの決定をし,同決定は原告に通知された。

2  原告の請求

原告は,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号の損害賠償代位請求権に基づいて,泊村に代位して,上記金500万円及びこれに対する本件砂搬出後である平成11年11月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を泊村に対して支払うよう求めた。

3  争点

本件工事に際し,本件砂を「残土」として扱い,Aの自由処分に委ねたこと(以下「本件処分」という。)が,違法・不当な村有財産の処分であり,泊村に損害を与えたといえるか。

4  争点に関する当事者の主張

【原告の主張】

(1) 本件請負契約締結に際し,被告は泊村を代表して,Aとの間で,本件現場から採取・搬出する砂一切について,Aがこれを無償で取得し,泊村はその代金を請求しないとの無償譲渡特約をした。

そして,この特約に基づき,Aは,本件砂を自由処分することが可能となった。

(2) 本件砂はコンクリート骨材用として使用できる,「無害な砂」であるところ,その小売価格は,コンクリート骨材用として売却した場合は約金6500万円(1立方メートル当たりの単価金3800円に,本件砂の量である1万7144立方メートルを乗じたもの),埋戻し用として売却した場合は約金4000万円(1立方メートル当たりの単価金2300円に,本件砂の上記量を乗じたもの)である。

そして,砂の採取・搬出・販売費用の一切を買主の負担とする現場価格(採取現場において取引される価格)によっても,本件現場の面積からすれば本件砂については金1000万円で売買できたはずであり,少なくとも,金500万円を下らない金額で売買できた。

(3) 被告は,本件工事が,旧国土庁の補助事業であるため,工期内に工事を完了させる必要があり,本件現場において本件砂を販売することが不可能であったと主張するが,仮に,本件工事が緊急性を有するものであったとしても,本件砂については,本件現場にある状態で,本件工事に支障のない期限内に本件現場から搬出することを条件として売買することにより,泊村は,少なくとも金500万円の収入を得ることができた。

しかも,泊村は,本件請負契約の1年以上前から本件工事を企画・立案しているのであるから,本件砂を売買するのに十分な時間的余裕があった。

(4) したがって,被告が泊村を代表して,本件砂をAに無償で譲渡した本件処分の違法・不当性は明らかであり,その結果,泊村は金500万円を下らない損害を被ったものである。

【被告の主張】

(1) 本件工事は,旧国土庁の補助事業(過疎地域集落再編整備事業)と並行し,平成10年度の繰越事業として施工され,平成11年3月末日に着工した後,同年7月30日(後,同年11月20日に変更。)までに工事を完成させる緊急性を有していた。

(2) そして,本件工事は,①本件現場における約1万9214立方メートルの砂の掘削,②うち約1万7144立方メートルの砂の他所への搬出,③本件現場の敷均し,④敷き均した土地への盛土,⑤L型擁壁工事,⑥道路,排水路,法面工事,⑦農道取付け改良工事,⑧上下水の配管,配線工事等を内容とするものであったところ,これらの工事の実施のためには,まず,①及び②の工事を完了させる必要があった。

なお,当時,本件現場から他所に砂を搬出するにつき,通行路の幅員が狭かった関係上,土砂搬出工事の遅延も危惧されていた。

(3) このような状況において,本件砂について売買契約を締結するには,①本件工事の工期に支障のない期限内に,本件砂を他所に搬出することを条件として売却処分する方法,②本件砂を仮置場に集積して売却処分する方法が考えられた。

しかしながら,①の方法については,(a)本件砂の買主を探して売買契約を締結し,その搬出を待つには時間がかかること,(b)本件現場の砂質については赤土混じりの砂等の存在も予測されていたところ,これらについては別途処理する必要があるが,その契約について上記の切迫した期限内に新たに入札する時間的余裕はなく,赤土混じりの砂等の処理に要する工事費も確定できず,また,工事費は泊村の負担になること,(c)本件砂を買い受ける者が砂の採取・搬出費用をも負担することになり,その結果,本件砂の価額は0円ないし0円以下になることが予期されたことから,採用することができなかった。

また,②の方法については,泊村は,砂の採取・搬出費用だけでなく,砂仮置場の確保とその費用を負担しなければならず,これらの費用は,本件砂の価額を上回ることとなり,その結果,泊村の支出が増大することになるため,同様に採用することができなかった。

(4) したがって,泊村の支出を少なくし,最も合理的・経済的に本件工事を実施する方策は,本件砂を「砂」でなく「残土」として扱い,その処分を請負者に任せる代わりに,採取・搬出等の費用を請負者に負担させ,本件砂を請負工事契約の一内容として処理することであった。

以上の経緯で,本件砂について「残土」として処理することを内容とする本件請負契約が締結されたのであるから,本件砂を無償で譲渡したとの原告の主張は失当であり,また,本件処分は,何ら違法・不当なものではない。

第3証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

第4当裁判所の判断

1  上記前提事実(第2の1)に証拠(甲2,3,甲5の1~5,甲6,7,11,12,16,甲17の1~3,甲20,21,26,37,39,40,乙2~4,15,16,28,乙29の1~4,乙30,証人C,原告D本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件請負契約を締結するに至った経緯等について,大要,以下の事実が認められる。

(1)  泊村は,平成7年度において,第1期B団地分譲宅地造成事業を単独事業として施工し,また,平成7年3月の村議会において,本件現場を第2期B団地分譲宅地造成事業(以下「本件事業」という。)予定地として選定した。

本件事業は,過疎の悩みを抱える泊村の若者定住対策事業であるところ,泊村は,平成10年12月25日,旧国土庁による「過疎地域集落再編整備事業」の補助金が内示されたのを受け,平成10年度の繰越事業として,本件事業を単独事業と補助事業とに分けて施工することとした。

(2)  本件事業の内容は,次のとおりである。

ア 宅地造成工事(単独事業)

土工として,①本件現場における約1万9214立方メートルの土砂(砂)の掘削,②うち約1万7144立方メートルの土砂(砂)の他所への搬出(①との差の部分は,盛土に用いられる。),及び③本件現場の敷均しを行い,その後の造成附帯工として,④造成地の化粧盛り土,⑤村道部分のL型擁壁工事等を行う。

イ 集落再編整備事業(補助事業)

本件現場における,①道路,排水路,法面保護工事,②上下水の配管,配線工事等を行う。

なお,この集落再編整備事業については,用地買収費を含め,金4990万円の費用を要することが予定されていたが,うち金2495万円を国からの補助金,うち金2490万円を過疎債(この70パーセントは地方交付税で補填される。),うち金5万円を泊村費で賄う予定であった。

(3)  泊村は,本件事業の用地として,平成8年度に2049平方メートルの土地を代金1085万9700円で地権者から買収していたが,平成10年12月ころから平成11年1月上旬ないし中旬ころにかけ,新たに7903平方メートルの土地を代金4386万4700円で地権者から買収し,合計9952平方メートルの土地が,本件現場として本件事業に供されることとなった。

(4)  本件事業に先立って,平成10年3月19日,泊村議会に原告を含む村議会の全議員で構成する,定住対策特別委員会が設置され,同委員会は,同年5月8日から平成11年1月29日まで計7回に亘って開催された。

同委員会においては,本件事業に関して,宅地造成計画(案),土質調査及び砂採取,分譲価格等の問題について協議を重ねる傍ら,現場視察を行い,最終的に,宅地の分譲価格をできるだけ低く設定するため,泊村の支出が最も少なくなる工法で本件工事を施工することと決定された。そして,本件工事によって発生する本件砂についても,分譲価格を低く設定するなどのために最も有効な方法でこれを活用することとされた。

なお,宅地の分譲価格は,用地買収費や工事にかかった費用から,補助金の収入を差し引いて決定されるものである。

(5)  ところで,本件事業の工期は,平成11年11月20日完成の予定であったが,補助事業が原則として単年度主義であることなどから,本件事業については特別な事情がない限り,それ以上の工期の延期が許可されることは困難な状況にあった。

そして,このように工期が限定されている中で,本件工事のうち土工については,その後の造成附帯工及び補助事業の施工可能な日数を残して完了していなければならず,そのためには,本件砂を早急に本件現場外へ搬出する必要があった。

また当時,本件現場からの土砂の搬出については,民家が密集した幅員の狭い1車線の県道,村道を通過する必要があると考えられていたことなどから,請負者に不利な条件を強いることが推測された。

これらの事情を考慮して,被告は,本件砂を本件現場で直接販売する方法について,砂の販売が完了する期間が限定できず,本件砂を工程通りに本件現場外に搬出することができるとは限らないため,採用することができないと判断した。

(6)  そこで,被告は,平成10年12月ころ,当時の泊村企画振興課長Cに対し,本件砂を機械掘削して採取し,本件現場外に搬出した上,①10キロメートル離れた第三者に売却処分する方法,②0.5キロメートル離れた場所に仮置きして第三者に売却処分する方法について,泊村が負担する費用を算出させたところ,これらの費用は,いずれも本件砂を売却した際に泊村が得られるであろう代金額を上回っていた。

そこで,被告は,本件砂について売却して処分するのではなく,「残土」として取扱い,請負者の自由処分に任せる代わりに,機械掘削して採取する費用,及び搬出等の「残土」処分費用を請負者に負担させることが,泊村の支出を最も少なくすることができる方法であると判断した。

(7)  泊村は,平成11年3月16日の3月定例村議会において,平成10年度分譲宅地特別会計補正予算(第3号)の決議を経た。

そしてCは,同月19日,工事費用を907万9350円(うち消費税相当額43万2350円)とする本件工事についての起工伺を作成した。なお,同起工伺の中においては,砂1万9214立方メートルの機械掘削費用及び1万7144立方メートルの「残土」処分費用について,当初から計上されていなかった。

(8)  本件工事については,平成11年3月29日に指名競争入札が行われたが,その際の入札条件として,閲覧用設計書には,砂1万9214立方メートルの機械掘削費用及び1万7144立方メートルの「残土」処分費用は無単価と記載されており,また,口頭にて機械掘削費用及び「残土」処分費用については,採取した砂利代をもって充当するよう説明がされた。

そして,本件工事についてはAが金861万円で落札し,同月30日,本件請負契約が締結され,同契約の一内容として,上記機械掘削費用及び残土処分費用については,採取する砂利代をもって充当するとの合意がなされた。

なお,本件請負契約はその後変更され,契約内容として農道取付工事が付加され,工期については,この契約内容の変更や小玉西瓜の生産との関係,また,下水道工事と併せて最終的な宅地部分の化粧をする必要が生じたことなどにより,平成11年11月20日まで延長された。そして,請負代金額については,規格等の変更も伴い,総額金1419万8100円となった。

(9)  Aは,平成11年5月25日から同年7月29日までのうち35日間にわたって,本件現場から1万7144立方メートルの砂を採取・搬出し,その後,同年8月から11月20日ころまでにかけて,造成附帯工及び補助事業が行われた。

なお,本件砂は,その後Aが請け負った工事等で費消されたり,他の業者に売却されたりした。

2  本件処分の違法・不当性について

(1)  本件砂は,元来,村有財産である「物品」に該当するものというべきである。

そして,上記認定のように,本件請負契約は,請負者の作業内容として砂の採取・搬出をも予定しているものであるところ,泊村は,これらの作業において請負者が要する費用の支払に代えて,請負者に対し,泊村が所有する本件砂の所有権を移転させることとし,その方法として,本件砂を「残土」とし,自由に処分することを委ねたものである。

したがって,本件処分については,「物品」たる本件砂を原告主張のようにAに無償譲渡したものではなく,本件請負契約における支払手段として使用したものというべきである。

(2)  この点,原告は,本件砂については,本件事業に支障のない期限内に搬出することを条件として本件現場にある状態で売買契約を締結することによる,現地売買の方法で処分すべきであったと主張する。

ア 確かに,原告が主張するとおり,採取・搬出費用を購入者が負担した上で,本件砂を購入し(その際の価格が現場価格である。),本件事業に支障のない期限内に搬出することができるならば,採取・搬出費用を計上しないで残土を請負者の自由処分に委ねる本件処分と比べ,泊村は,本件砂の代金(現場代金)を得ることができることとなる。

しかしながら,

(ア) 上記認定のように,本件砂については早急に本件現場外に搬出することが必要であるだけでなく,搬出自体に不利な条件が伴うことが推測されていたのであり,また,当時,本件砂全体について,造成附帯工及び補助事業の施工可能な期限内に本件現場外に搬出することを条件とした売買契約を締結できる見通しがあったとまでを認めるに足る証拠は見当たらない。

なお,原告は,泊村は,本件請負契約の1年以上前から定住対策特別委員会を設置して,本件事業を企画・立案しているのであるから,本件砂について(その財産的価値を把握した上で)これを処分するに十分な時間的余裕があったと主張するが,上記認定のように,本件土地の買収が本格的に開始されたのは平成10年12月ころからであり,そのころ以降に至って初めて本件砂の処分が可能となったものというべきであるから,本件砂の処分に十分な時間的余裕があったとはいえない。

(イ) のみならず,他の業者に本件砂を現場代金で売却した場合,Aが861万円で入札したとは限らず(他の業者も含め,入札額は高くなると考える。),Aとしては,残土を自由に処分できることのメリットを勘案した上で,入札価格を決めたと考えられ,その意味では,本件砂は,必ずしも請負者が負担すべき採取・搬出費用とだけ対価関係にはあるとはいえないことが窺える(もっとも,このような処理は,請負代金がその仕事の実態を反映していないという問題を有するが,このことと,泊村に経済的な損失を与えたとまでの立証がなされたか否かという点とは別問題である。)。

イ 一方,被告は,本件現場の砂質について赤土混じりの砂等の存在も予測されていたところ,これについて別途契約する必要があったと主張するが,これは,本来,本件請負契約において処理されるべきものであるというべきであり(その場合は,赤土の掘削・搬出費用は,請負代金に加算されることになる。),上記主張は理由がないというべきである。

また,被告は,本件砂を購入する者が,砂の採取・搬出費用を負担する結果,砂の価額が0円ないし0円以下になることが予期されたとも主張するが,いわゆる現場価格は,採取・搬出費用を購入者が負担することが前提とされているところ,それが0円ないし0円以下になるようなことは考えにくい。

ウ 上記イのように,被告の主張にも首肯しがたい部分が存在するが,上記アによれば,なお,本件砂を支払手段として使用すること自体が違法・不当であり,これによって泊村が損害を被ったとまではいえないというべきである。

(3)  本件砂を支払手段として使用するとしても,本件砂の価額がその採取・搬出に要する費用を上回るような場合は,その処分は不当であり,被告は,それによって本件砂の価額と上記費用の差額分について泊村に損害を与えたものとして,泊村に対して賠償する義務を負う可能性がある(上記(2)のとおり,本件工事の工期に支障のない期限内に,本件砂を他所に搬出することを条件として売却処分する方法〔被告の主張(3)①の方法〕では,期限内に採取・搬出することのできる業者がいない限り,そもそも売却を実施することはできないというべきであるが,本件砂を仮置場に集積して売却する方法〔被告の主張(3)②の方法〕による場合,工期に制限されず,本件砂を完売することにより,泊村は利益を得ることができるはずであり,その利益を得られなかったことによる損害を賠償する義務を負う可能性がある。)。

ア そこで,本件請負契約当時における本件砂の価額,及びその採取・搬出に要する費用について検討するに,証拠(甲7,16,甲17の1~3,乙2,3,乙29の1~4,乙30,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

(ア) 砂を機械掘削により採取するには,砂1立方メートル当たり金183円の費用を要し,また,本件現場外に搬出するため,仮にトラックで500メートル運搬するとして,砂1立方メートル当たり金307円の費用を要する。

さらに,上記以外に,砂を掘削した後の本件現場をブルドーザーにより敷き均す費用,及び,泊村は,当時砂の仮置用の土地を所有していなかったので,同土地の賃借料も負担しなければならなくなる可能性がある。

(イ) 本件現場の数百メートル南方では,旧建設省が平成10年7月31日以降,「EF道路泊IC第1改良工事」を行っていた。

そして,同工事によって発生した砂16万立法メートルについては,同省の仮置場まで運搬された上,同年8月27日,一般競争入札に付され,同年9月17日,中部砂利生産協同組合が,1立方メートル当たり金315円(うち消費税金15円)の単価で落札した。

なお,同砂は,コンクリート骨材用として使用することのできる「無害な砂」としてではなく,「無害でない砂」として処理されていた。

イ 以上によれば,本件請負契約締結当時における本件砂の価額についても1立方メートル当たり300円程度であると推認され,そうすると,本件砂の採取・搬出に要する費用は,この価額を上回るものというべきであり,これに反する原告の主張は,以下のとおり採用できない。

すなわち,

(ア) 原告は,本件砂の価額については,砂を採取した業者が販売する小売価格によって判断すべきであるところ,この小売価格は,鳥取県土木部作成の土木工事実施設計単価表(甲4,甲14の1・2)によれば,砂が埋戻し用であるとしても1立法メートル当たり金2300円,コンクリート骨材用であれば1立法メートル当たり金3800円であると主張する。

しかしながら,本件において問題としている砂の価額は,泊村が所有している砂を売却する場合の価額であるところ,上記単価表は,県土木部が発注する土木工事において,業者が所有する砂を用いて工事を施工させる場合の設計単価を収録したものであるから(それゆえ,当該単価には,業者による掘削・運搬等の費用を含んでいる。),この単価をもって本件砂の価額を判定することはできないというべきである。

(イ) なお,前記推認にかかる本件砂の価額は,本件砂を「無害でない砂」として処理した場合の価額であり,仮に,本件砂を「無害な砂」として処理した場合は,その価額は増大することになるところ,本件砂については,平成12年1月23日に至って,広島地区生コンクリート協同組合の試験によって「無害な砂」との判定がされている(甲27)。

しかしながら,①証拠(甲19の1・2,甲27,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,砂の性質を最終的に判定するには6か月程度の期間を要することが認められ,本件現場の買収が本格的に開始された平成10年12月から本件請負契約締結までの間に本件砂の性質を判定する時間的余裕はなかったこと,②他方,泊村が本件現場の土地所有権を取得する以前に,砂の性質を試験することは現実的ではないこと(証人C),③上記認定のように,近隣地から採取された砂について「無害でない砂」として処理されていたことに鑑みれば,本件砂について,「無害でない砂」であること(「無害な砂」でないこと)を前提として本件請負契約当時における価額を判断することは,妥当性を欠くとはいえない。

この点,原告は,本件現場付近の砂質については,最終的には「無害な砂」と判定される性質を有するものであり,このことは,本件請負契約当時,被告側も熟知していたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。

(ウ) 原告は,本件現場付近の砂は,約1000平方メートル当たり金80万円ないし金100万円の価格で取引されており,本件現場の面積が9952平方メートルであるから,本件砂の価額は約1000万円であるとも主張するが,原告主張の取引の事実を裏付けるに足りる的確な証拠はなく,また,弁論の全趣旨によれば,砂の採取土地の面積と同所での砂の採取量とは必ずしも比例するものではないから,土地の面積比によって採取される砂の価額を決定することが妥当であるとはいえない。

3  以上によれば,被告が泊村を代表して,本件砂を本件請負契約における支払手段として使用した本件処分が,違法・不当な村有財産の処分であり,泊村に損害を与えたとはいえない。

第5結論

以上の次第であって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 山本和人 裁判官 小野寺明)

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