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鳥取地方裁判所 平成5年(わ)154号 判決

判決主文

被告人株式会社特研工業を罰金一八〇〇万円に、被告人谷口を懲役一年に処する。

被告人谷口に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

罪となるべき事実の要旨

被告人株式会社特研工業は、鳥取県米子市永江八二八番地に本店を置き土木建築工事の設計・施工・監理等を営んでいた有限会社特研工業が平成五年三月二〇日組織変更したもの、被告人谷口博は、右有限会社特研工業の代表取締役として業務全般を統括管理していたものであるが、被告人谷口博は、右有限会社特研工業の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一 平成元年四月一日から同二年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六七、八八七、七三三円で、これに対する法人税額が二六、〇九〇、三〇〇円であるのに完成工事高の除外、架空工事原価を計上するなどの行為により、右所得の一部を秘匿した上、平成二年五月三一日、同市東町一二四番地一六所在の米子税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九、五八六、〇八六円で、これに対する法人税額が二、七九六、四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税二三、二九三、九〇〇円を免れ

第二 平成二年四月一日から同三年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が九七、〇〇一、六九三円で、これに対する法人税額が三五、五一七、七〇〇円であるのに前同様の行為により、右所得の一部を秘匿した上、平成三年五月三一日、前記米子税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一五、八七九、四八八円で、これに対する法人税額が五、〇九六、九〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税三〇、四二〇、八〇〇円を免れ

第三 平成三年四月一日から同四年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が七八、八三六、四四五円で、これに対する法人税額が二八、六八一、六〇〇円であるのに前同様の行為により、右所得の一部を秘匿した上、平成四年五月二九日、前記米子税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九、五四一、一七二円で、これに対する法人税額が二、六九五、九〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税二五、九八五、七〇〇円を免れ

たものである。

適用した罰条

被告人株式会社特研工業につき

法人税法一五九条、一六四条一項、刑法四八条二項

被告人谷口につき

法人税法一五九条、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、二五条一項

(量刑の事情)

本件は、被告人谷口博が、その実質上経営する株式会社特研工業(但し、平成五年三月二〇日までの商号は有限会社特研工業)の法人税の確定申告に際し、平成元年度から同三年度までの三事業年度にわたり内容虚偽の申告書を提出して合計七九七〇万円余の法人税を免れたという法人税法違反の事案であるところ、被告人は、業績の良いときに将来に備えたいなどの気持ちから、いわゆる簿外資金を蓄積することを考え、本件多額の脱税を行ったもので、その逋脱率も約九割という高率であるから、その動機に同情すべき点はなく、犯行も重大と言わなければならない。犯行の態様を見ても、被告人が取引先等に依頼・手配して、水増し金額の請求書・領収証等を作らせたり(手書きするほかなく、以前のものと統一するため遡ってすべて手書きに書き替えたりまでしている)、あるいは作成名義の押印のある請求書・領収証等を入手して虚偽の金額を記入させ、さらには、虚偽の取締役会議決書まで作成して架空の役員報酬を計上するなどした点は、周到かつ巧妙であり、また、被告人は平成二年に一度税務調査を受けて、一部完成工事高除外が発覚するや、架空経費の種類・金額を増やして計上するなどして、その後も逋脱を継続した点は、強い犯意を窺わせること等を合わせ考えると、犯情は悪質であると言わなければならない。かかる犯行が横行するときは、国家財政を危殆に瀕せしめる恐れがあるとともに、国民の納税意欲を減退せしめ、ひいてその規範意識を揺るがして国家の存立をも脅かしかねない恐れがあるから、被告人、被告人会社の刑事責任には重いものがあると言うべきである。しかしながら、他方、被告人は本件に関しては国税査察の段階から、事実を素直に認めて犯行の詳細について自ら供述するなど、調査への協力的姿勢と反省の情を示していること、被告人会社では営業から経理まで被告人が全権をもって直接掌理し、いわゆるワンマン態勢で営まれていたが、本件後は株式会社に組織変更したうえ、各部門ごとに責任者を置いて、請求から集金まで独立的に行い、経営上の重要事項は役員会議において役員の協議により決せられることとするなど、経営形態が実質上被告人のワンマン態勢とならぬよう整えられたことが窺えること、被告人会社は、本件が新聞等で報道され、公共工事の指名停止、青色申告の承認取消し等も受けるなどし、これらが業績悪化への打撃となって厳しい局面に立たされており、また、本件後修正申告が行われ本税・重加算税を合わせて約一億九〇〇〇万円余りを既に支払い、三一〇〇万円余りの延滞税についても、本年八月までにはその支払を了する予定であるなど、本件に関して被告人会社は既に実質的な社会的制裁を受けているともいえること、被告人には交通罰金前科が一犯あるだけであることなど被告人及び被告人会社に有利ないし酌むべき事情も認められるので、以上一切の情状を勘案して、被告人及び被告人会社に対し主文掲記の刑を量定したうえ、被告人に対しては、社会内における更生の機会を与えるを相当と思料し、その刑の執行を猶予することとした次第である。

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