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鳥取地方裁判所 昭和27年(行)7号・昭27年(行)9号 判決

原告 石尾晴海 外九五二名

被告 鳥取県 外一名

一、主  文

原告等の請求はいづれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は被告鳥取県が昭和二十七年五月七日鳥取県告示第二四二号を以てなした鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び同施行規程並に被告鳥取県知事が同年五月二十八日鳥取県告示第二四七号を以てなした右設計書及び施行規程の認可はいづれも無効であることを確認する。訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として被告鳥取県は昭和二十七年四月十七日火災を受けた鳥取市における都市計画事業として鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理の施行を命ぜられ、右事業の実施のため同年五月七日鳥取県告示第二四二号を以て都市計画法施行令第十七条の規定により鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び同施行規程を定めた。

抑も公共団体が都市計画法施行令第十七条による設計書、費用負担方法及び耕地整理法に基く規約に代る必要事項を定めたときはこれを告示し、十日間土地所有者及び関係人の縦覧に供した後都道府県知事の認可を受けねばならないし、又前記鳥取県告示第二四二号によれば前記設計書及び施行規程は昭和二十七年五月十日から同月十九日まで鳥取県庁に備えておいて毎日九時から十六時まで縦覧に供する旨定めたに拘らず、被告鳥取県は適法な告示をせず、又これらの書類を全然縦覧に供することなく右縦覧期間を徒過した。而して右都市計画法施行令第十七条によれば土地所有者及び関係人は同条に定めた設計書及び費用負担方法その他の事項に関して異議あるときは縦覧期間内に都道府県知事にこれを申出ることができ、この異議の申出のあつたときは、都道府県知事は都市計画審議会の議決に付しこの議決が当初定めた設計書、費用負担方法その他の事項の変更を必要とするときは公共団体にその変更を命ずることゝなつているので、この規定は土地所有者及び関係人の権利義務の消長に重大な関係を有するので強行規定と謂わねばならない。従つてこの規定に違反して縦覧に供することなく、その期間を徒過したときは設計書及び施行規程を定める処分は、その手続に重大な瑕疵あるものとして当然無効である。

仮りに被告鳥取県がその主張する如く右設計書及び施行規程を前記鳥取県告示第二四二号の規定に従つて、昭和二十七年五月十日から同月十九日まで鳥取県庁に備えおいて縦覧に供したとしても

(一)  鳥取県公布式条例第四条によれば「県条例は特に施行期日を定めない限り公布の日から起算して十日を経過した日から施行する」とあり同第五条第二項は「県規程は知事名をしるし、知事印をおした後番号を付して公布する」「第三条第四条の規定は前二項の県規則及び県規程の公布にこれを準用する」と定めているが、鳥取県告示第二四二号鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び同施行規程は特に施行期日を定めていないから、公布の日から十日を経過した後始めて施行さるべきものである。然るに右告示は昭和二十七年五月七日公布された如くであるが事実は同月九日印刷されたものであるから、同日から十日を経過した同年五月二十日施行されたものと解すべきであり、従つて同日右告示の効力を生ずるのであるから、これが縦覧期間も同年五月二十日から起算すべきである、よつて右告示で縦覧期間を昭和二十七年五月十日から同月十九日までと定めたのは縦覧期間を開始させるべきでない時期に縦覧に供したことになり、その縦覧は不適法で無効である。

(二)  昭和二十七年五月八日建設省告示第四七二号及び同日同省告示四七三号は鳥取都市計画火災復興土地区劃整理及び鳥取都市計画街路変更の各関係書類はいづれも鳥取県庁及び鳥取市役所に備えおいて、縦覧に供する旨規定しているので、被告鳥取県は該告示の趣旨に従い前記設計書及び施行規程を鳥取県庁及び鳥取市役所において縦覧に供すべき義務を負担するものであるに拘らず、被告鳥取県は鳥取県庁においてのみ縦覧に供しているので、このような手続による縦覧は不適当であつて無効と謂わねばならない。

次に被告鳥取県知事は被告鳥取県が定めた前記鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び同施行規程が前記の各理由によつていづれも無効であるに拘らず、昭和二十七年五月二十八日鳥取県告示第二七四号を以て都市計画法施行令第十七号による認可を与えたので、右被告鳥取県知事のなした認可処分も亦当然無効と謂わねばならない。

而して原告等はいづれも鳥取市に居住し、都市計画区域内に土地を所有し、若くは土地賃借権を有する者であるが、前記鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地整理設計書は、土地区劃整理を実施するため国有地道路として五〇、七八四坪四八、水路として四八八坪を増加する旨を定め、又同施行規程第三条において「従前の土地各筆の地積は昭和二十七年四月十七日現在の土地台帳地積(国有地については国有財産台帳地積台帳がないときは実測地積以下同じ)による。但し同日経過後分筆又は合筆をした土地については、同日現在における分筆又は合筆をした土地については同日現在における分筆又は合筆前の土地台帳の地積を以て土地台帳の地積とみなす。前項の日経過後あらたに登録した土地についてはその地積による」と定めているので、原告等は右設計書及施行規程の規定を実施されることにより、自己の財産権を侵害される結果を招来するので、茲に被告鳥取県が昭和二十七年五月七日鳥取県告示第二四二号を以てした鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び同施行規定の無効であること、並に被告鳥取県知事が同年五月二十八日鳥取県告示第二四七号を以てした、右設計書及び施行規程の認可の無効であることの確認を求めるため本訴請求に及んだと述べた。

(立証省略)

被告等指定代理人は主文と同旨の判決を求め答弁として被告鳥取県が鳥取市における都市計画事業として鳥取都市計画事業火災復興土地区劃整理の施行を命ぜられたものであること、被告鳥取県が都市計画法施行令第十七条の規定により昭和二十七年五月七日鳥取県告示第二四二号を以て鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び同施行規程を定めたこと、右設計書及び施行規程の内容が原告等主張の如きものであること、被告鳥取県知事が原告等主張の日鳥取県告示第二四七号を以て右設計書及び施行規程を認可したことはいづれもこれを認めるが、その余の原告等主張事実はこれを否認する。

被告鳥取県は都市計画法施行令第十七条の規定に従つて昭和二十七年五月七日県告示第二四二号を以つて定めた前記設計書及び施行規程を県公報に登載し、これを同月八日県下一六八の市町村全部に発送して告示をした上、同年五月十日から同月十九日まで右設計書及び施行規程を鳥取県庁に備えておいて、毎日九時から十六時まで縦覧に供し、被告鳥取県知事はその後同月二十八日該設計書及び施行規程を認可したものであつて、その間何等手続上の違法はない。又鳥取県公布式条例の内容が原告等の主張のとおりであることは争わないが、該条例は鳥取県条例、規則、規程の制定方式を定めたものであつて告示自体にその適用あるものでなく、告示は公布にによつて直ちにその効力を生ずるものであることは疑のないところである。被告鳥取県は敍上の如く鳥取県告示二四二号が登載されている県公報を昭和二十七年五月八日に県下各市町村に発送済であるから、同日告示の効力を生じたものであつて縦覧期間を同月十日から十九日までと定めたのは適法である、右と異る原告等の主張は当らない。

次に被告鳥取県が鳥取市役所において本件設計書及び施行規程を縦覧に供しなかつたことは認めるが、建設省告示第四七二号は建設大臣が都市計画法第三条によつて、鳥取都市計画火災復興土地区劃整理を決定し、同省告示第四七三号は同じく鳥取都市計画街路を変更し、それぞれこれを告示し、且この決定についての関係図書を鳥取県庁及び鳥取市役所において、縦覧することを告示したに過ぎない。従つて該決定に基き、都市計画法第十三条同施行令第十五条によつて、土地区劃整理の施行を命ぜられた被告鳥取県は、これが実施のため、同施行令第十七条の規定によつて自ら設計書費用負担方法及び耕地整理法に基く規約に代るべき必要事項を定め、これを告示し縦覧に供するものであるから被告鳥取県としては主務大臣の決定告示に拘束されるものでなく、従つて本件設計書及び施行規程を鳥取市役所において縦覧に供する必要はない。

よつて原告等の請求は失当であると述べた。(立証省略)

三、理  由

被告鳥取県が、鳥取市における都市計画事業として鳥取都市計画事業として鳥取都市計画火災復興土地区劃整理の施行を命ぜられたものであること、同被告が右事業の実施のため、都市計画法施行令第十七条の規定により昭和二十七年五月七日鳥取県告示第二四二号を以つて鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書(以下設計書略称する)及び施行規程を定めたこと及び被告鳥取県知事が同月二十八日鳥取県告示第二七四号を以つて右設計書及び施行規程を認可したことはいづれも当事者間に争のないところである。

よつて先づ、被告鳥取県が右設計書及び施行規程を都市計画法施行令第十七条に従つて適法に縦覧させたかどうかにつき判断する。

(一)  都市計画法施行令第十七条第一項の規定によれば、公共団体が同令第十五条の規定によつて土地区劃整理の施行を命ぜられたときは、設計書、費用負担方法及び耕地整理法に基く規約に代るべき必要事項を定め、これを告示し十日間土地所有者及び関係人の縦覧に供した後都道府県知事の認可を受くべきこととなつているが、証人門田隆造の証言によりその成立を認め得る乙第一号証郵便官署の捺印の成立については争いなくその余の部分については右証人の証言に依り成立を認め得る乙第三号証成立に争のない乙第四号証同第八、九号証の各記載及び右証人門田隆造の証言を綜合すれば、被告県は昭和二十七年五月七日都市計画法施行令第十七条の規定に従い本件設計書及び施行規程を定め、同年五月十日から同年十九日までの間鳥取県庁に備えおいて毎日九時から十六時まで縦覧に供する旨の鳥取県告示第二四二号を登載した鳥取県公報の印刷を同月八日県営印刷所で終え、同日午後六時から十二時までの間に鳥取郵便局から県下一六八の市町村全部に洩れなく発送した事実が認められるから、右県公報はその翌九日遅くとも十日には各市町村に配達されたことが推認される。もつとも成立に争のない甲第一号証に依れば、鳥取市役所に配達された五月七日附の県公報には五月二十日の受附印が押捺してあることが認められるけれども、米子市役所、郡家町役場にはいづれも同月九日に河原町役場には同月十日に夫々五月七日附の公報が配達され、殊に鳥取市役所庁舎内にある鳥取市選挙管理委員会には五月七日附の公報が鳥取市役所総務課を経て同月十日に配達された事実が成立に争のない乙第四号証同第七号証乃至第九号証により認められるので、右事実と前記証人門田隆造の証言とを綜合して考えると、市役所にも三月七日附の公報は同月九日頃配達されたが、その当時は市役所の事務が繁忙を極めていたことが推測されるので右公報の受附印は遅れて押捺されたものであると推認するのが相当であり甲第四号証の記載は右認定の妨げにはならない。又証人加藤久雄の証言に徴すれば被告県は本件設計書及び施行規程を右県告示第二四二号で定められた縦覧期間中即ち五月十日から同月十九日までの間鳥取県庁玄関横に備えおいて一般の縦覧に供し、その間縦覧希望者は多いときは一日数名あつた事実を肯認するに充分で右各認定に牴触する証人桑原正明、岡垣伝重の各証言部分はたやすお借用し難くその他右認定を覆えすに足る証拠はない。

およそ地方公共団体のなす告示は、その定められた事項を県下各市町村の一般住民に周知させるにあるのであるから、公布すべきものの性質目的に照し、相当と認める方法によるべきものであると解すべきところ、鳥取県においては鳥取県公布式条例が定められており、該公布式条令には県条例、県規則、県規程の公布は鳥取県公報に登載して行うのを原則とし例外として天災その他やむを得ない事情で公報に登載することができないときは、県庁、市役所、町村役場の掲示場に掲示して登載にかえることができる旨並に公報は管下市町村に配布すべき旨を定められているので、被告県が本件設計書及び施行規程を告示するに当り、右公布式条例に従つて県公報に登載しこれを県下市町村に発送する方法を採つたものであることが窺われる。そうすると、被告県が鳥取県告示第二四二号の登載されてある県公報を、昭和二十七年五月八日に県下各市町村に発送し、該公報は遅くとも同告示に示されている縦覧期間の開始日たる五月十日には各市町村に配達されたこと、その間被告県は鳥取県庁で本件設計書及び施行規程を一般住民に縦覧に供したこと前段認定のとおりであるから、被告県は都市計画法施行令第十七号第一項所定の告示及び縦覧を適法にしたものといわねばならない。思うに本件設計書及び施行規程は土地所有者及び利害関係人に重大な利害関係を及ぼす内容を包含していることは明らかであるから被告県としては、たとえそれが法的には義務づけられていないにせよ右県告示第二四二号を県公報に登載して告示する以外に更に新聞紙上に公告するとか、又は県庁及び市役所の掲示場に掲載する等の方法により、積極的に一般市民に周知させる手段を講ずることが望ましかつたであろう。しかるに、被告県が右県公報を市町村以外の官公署並に一般購読者に対して発送した日時はまちまちで、しかもその中に相当遅れて発送されたもののあることは弁論の全趣旨並に成立に争のない甲第三号第五号証を綜合看取できるので、被告県が本件設計書及び施行規程を一般市民に周知させる処置に万全を尽さなかつた譏は免れないが、さきに判断した如く法的には被告県は都市計画法施行令第十七条所定の告示及び縦覧を適法にした認めるを相当と考えるので原告等の主張は採用できない。

(二)  原告等は鳥取県公布式条例第四条第五条には県条例、県規則、県規程等は特に施行期日を定めない限り公布の日から起算して十日を経過した日から施行すると定められてあるところ、本件設計書及び施行規程には特に施行期日を定めていないから公布の日から十日経過した後始めて施行さるべきである。したがつて、本件設計書等の縦覧期間の始期は公布の日から十日を経過した日から起算して十日間と定むべきであるのに五月七日附県告示第二四二号で縦覧期間を五月十日から十九日までと定めたのは、未だ縦覧を開始すべきでない時期に縦覧に供した違法があるので、たとえ被告県が右期間中縦覧に供した事実があつたとするも、その縦覧は無効であると主張するけれども、県公布式条例第四条第五条は条例等に施行期日の定めのない場合の施行日を定めたものであるが告示は公布の日から直に効力を生ずるものであることは疑を容れる余地なく、都市計画法施行令第十七条の縦覧期間の始期を定めるに当り告示のあつた日から十日間を置く必要のないことは言を俟たないので、所論は採用の限でない。

(三)  原告等は本件設計書及び施行規程の縦覧については、昭和二十七年五月八日建設省告示第四七二号同第四七三号の覊束を受け被告県は鳥取県庁及び鳥取市役所において本件設計書及び施行規程を縦覧に供すべきであつたのに、その手続を採らなかつたので、たとえ鳥取県庁において縦覧に供したとするも、完全な縦覧としての効力はないと主張し、被告県が鳥取市役所において縦覧に供しなかつたことは、被告等の認めるところである。しかしながら前記建設省告示第四七二号は都市計画法第三条に基き主務大臣たる建設大臣が都市計画として鳥取都市計画火災復興土地区劃整理を決定したことを、又建設省告示第四七三号はさきになした鳥取都市計画街路の変更を決定したことをそれぞれ告示し、且つこれらの関係図書は鳥取県庁及び鳥取市役所に備え置いて縦覧に供すべき旨を告示したものであるから、建設大臣の決定した土地区画整理の施行を都市計画法第十三条同法施行令第十五条の規定によつて命ぜられた被告県が、同法施行令第十七条の規定に従つて定めた本件設計書及び施行規程の告示及び縦覧とは何等関連はなく、即ち前記建設省告示は被告県が同法施行令第十七条の規定に従つてなすべき縦覧場所を指示したものでないこと明らかであるので、被告県が鳥取市役所において縦覧させなかつたとて、所論のような違法はない。

更に原告等は被告知事は公共団体としての被告県が制定した本件設計書及び施行規程に対し、昭和二十七年五月二十八日附鳥取県告示第二七四号を以つて認可を与えたが、本件設計書及び施行規程は都市計画法施行令第十七条所定の適法な縦覧がなされなかつたのであるから、被告知事のなした右認可は無効であると主張するけれども、被告県が右施行令第十七条の規定に従い本件設計書及び施行規程に対し適法な告示及び縦覧をなしたことは前記認定のとおりであるから、これらに対する被告知事の昭和二十七年五月二十八日の認可処分には違法の点は毫も存しないこと明らかであり、したがつて本件設計書及び施行規程は右被告知事の認可に依り効力を発生したものといわねばならない。

敍上の次第で原告等の被告両名に対する請求はいづれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 和田邦康 石見勝四 石藤太郎)

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