鳥取地方裁判所 昭和28年(行)3号・昭27年(行)11号 判決
原告 玉谷禎子 外七〇名
被告 鳥取県知事 外一名
一、主 文
被告が別紙目録記載のとおり原告等の各所有土地に対してなした各換地予定地指定処分はいずれも無効であることを確認する。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人等は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、被告は都市計画法第十三条同施行令第十五条の規定により、建設大臣の命を受けて、昭和二十七年四月十七日火災を受けた鳥取市に対して、土地区画整理の施行を行う公共団体鳥取県の、鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理施行者であり、原告等はいずれも右土地区劃整理施行地域内に土地を所有し、鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理施行規程第五条第十四条の定めにより、被告から別紙目録記載のとおり、原告の各所有土地に対して各換地予定地指定処分を受けたものである。
一、都市計画法施行令第十七条第一項によると、公共団体第十五条の規定により土地区劃整理の施行を命ぜられたるときは、設計書負担方法及耕地整理法に基く規約に代るべき必要事項を定めて之を告示し、十日間土地所有者及関係人の縦覧に供したる後都道府県知事の認可を受けなければならないことになつている。又昭和二十七年五月七日附鳥取県告示第二百四十二号によると鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び施行規程を次のように定め、昭和二十七年五月十日から昭和二十七年五月十九日まで鳥取県庁に備えおいて毎日九時から十六時まで縦覧に供するとある、しかるに鳥取県は鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書(以下設計書という)及び施行規程を、全然土地所有者及び関係人の縦覧に供することなく右縦覧期間を徒過したものであるから、鳥取県知事が同年五月二十八日鳥取県告示第二七四号をもつて認可した右設計書及び施行規程は無効である。従つて被告が無効であるところの右設計書及び施行規程に基いてなした原告等に対する本件換地予定地指定処分はいずれも無効である。仮に鳥取県が右告示記載のとおり縦覧に供したとしても、県庁内の縦覧場所に「縦覧場所」なる表示をしなかつたので適法な縦覧に供したとはいえない。又右設計書及び施行規程は一般市民に周知徹底させる必要があるに拘らず鳥取市役所をも縦覧場所に指定しなかつたので適法な縦覧に供したとはいえない。
二、仮に右設計書及び施行規程の縦覧が適法になされたとしても、次の如き理由によつて原告等に対する本件換地予定地指定処分はいずれも無効である。即ち都市計画法施行令第十七条第二、三項によると、土地所有者又は関係人前項の規定に依り定めたる設計書、費用負担方法其他の事項に関し異議あるときは、前項に掲げる期間内に都道府県知事に之を申出ることができ、右の異議の申出があつたときは、都道府県知事は都市計画審議会の議決に付さなければならないこととなつている。そして訴外山岡要平及び同山岡君は、いずれも本件土地区劃整理区域内の土地所有者で、同令第十七条第二項に定められた異議申出の適格を有するものであるが、昭和二十七年五月十八日、被告に対し連名の異議申立書(甲第二号証の二)を提出して右施行規定に対する異議の申出をしたのに拘らず鳥取県知事はこれを都市計画審議会の議決に付することなく、右設計書及び施行規程を認可したが右は同令第十七条第三項に違反し、手続上重大な瑕疵があるので右設計書及び施行規程は当然無効であり、したがつて被告がこれに基いて原告等に対してなした換地予定地指定処分はいずれも無効である。
三、原告松岡重男、同松田重夫、同粂沢忠親、同浜田金一、同玉谷禎子について予備的主張として原告松岡重男外四名の宅地は別表記載の如く土地台帳地積より実測地積が広いのであるが仮に右設計書及び施行規程の成立に瑕疵がないとしても、換地処分は従前の土地の実測地積を標準としてなされるべきであるのに、施行規程第三条のように、「従前の土地各筆の地積は昭和二十七年四月十七日現在の土地台帳地積による、ただし同日経過後分筆又は合筆した土地については同日現在における分筆又は合筆前の土地台帳地積をもつて土地台帳の地積と見做す、」と規定することは、増歩地積(土地台帳地積と実測地積との差積)を何等の補償もなく取上げることとなり、憲法第二十九条に保証する財産権を侵害することになり当然無効といわなければならない。この点からするも原告松岡重男、同松田重夫、同粂沢忠親、同浜田金一、同玉谷禎子に対する本件換地予定地指定処分は無効であるので原告等は被告に対し本件各換地予定地の指定処分の無効確認を求めるため本訴請求に及んだと陳述し被告主張の抗弁事実を否認した(立証省略)。
被告訴訟代理人は原告等の請求はいずれも之を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とするとの判決を求め、答弁として原告等の主張事実中、被告が鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理施行者であること、鳥取県知事が昭和二十七年五月二十八日鳥取県告示第二七四号で鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区劃整理設計書及び施行規程を認可したこと、原告等がいずれも右土地区劃整理施行地域内に土地を所有し、被告から本件各換地予定地指定処分を受けたものであること、鳥取県が市役所を縦覧場所に指定しなかつたこと、県庁内の縦覧場所に「縦覧場所」なる表示をしなかつたこと及び昭和二十七年五月十八、九日頃訴外山岡要平山岡君が連名の異議申立書なる書面を被告宛に提出したこと、右山岡要平等が本件土地区劃整理地域内の土地所有者で都市計画法施行令第十七条第二項の異議申出適格者であることはいずれも之を認めるが、
一、鳥取県は昭和二十七年五月十日から昭和二十七年五月十九日まで鳥取県庁内で右設計書及び施行規程を毎日午前九時から午後四時迄一般の縦覧に供したから、県庁内の縦覧場所に「縦覧場所」なる表示をしなくとも又鳥取市役所を縦覧場所に指定しなくとも縦覧は適法であり原告等の主張するような違法はない。
二、訴外山岡要平同山岡君提出の異議申立書は、施行規程に対する異議ではなく、山岡個人の換地予定地の計画案に対する陳情に過ぎないから、被告がこれを都市計画審議会の議決に付さなかつたことについては何等違法はない。仮に右異議申立書が施行規程に対する異議であつたとしても、鳥取県火災復興事務所長訴外中西成城は右書面の趣旨が施行規程に対する異議であるか換地予定地の計画案に対する陳情であるか、疑義があつたので偶々出合つた鳥取市長訴外入江昶に右書面を渡し、山岡要平の真意を問うて貰つたところ同年五月二十日鳥取市長入江昶は右異議申立書を持つて来て中西成城に対し、「これは施行規程に対する異議申立ではなく、換地に対する陳情であり、山岡要平外一名は文面の一部を訂正した」と言つて差出したので、中西は、該書面の文書は異議申立書となつているが、施行規程に対する異議は之を取下げ、単に換地予定地に対する陳情書であるに過ぎないことが判明したので、右陳情に関する書類として、陳情受付整理簿に昭和二十七年五月十八日付で受理して処理したのであるから何等違法はない。仮に、該申立書の趣旨は、その文面に従つて、合理的に解釈すべきものであり、右の如き訂正を経ても尚、施行規程に対する異議であると判断されるとしても、訂正前の申立書は右入江市長を通じて之を取下げたものであり、訂正後の新しい異議申立書は同人を通じて昭和二十七年五月二十日に提出されたのであるから、既に異議申立期間の五月十九日を経過しているので右異議は不適法で無効であるから被告がこれを都市計画審議会の議決に付さなかつたことについては何等違法はない。
三、施行規程第三条には従前の土地各筆の地積は昭和二十七年四月十七日現在の土地台帳地積によると定めてあるが昭和二十七年四月十七日の鳥取市の大火は、広大な範囲に及び罹災者の数とその損害は膨大且つ深刻であつたので、早急に区劃整理を実施することが、鳥取市民全体の利益であり、公共の福祉にも適合するゆえんである。若しも右原告等の主張するように、各個人の所有地を一筆毎に実測をなしてから土地区画整理を始めるとすれば、徒らに日時を費し、且又、莫大の予算と人員を必要とすることとなるので、決して公共の福祉のためにならない。よつて、従前の土地各筆の地積は土地台帳地積によると定めたことは、技術上また止むを得ないところである。しかも被告は都市計画法施行令第十七条により、施行規程を土地所有者関係人の縦覧に供したが、これに対しては一件の異議申立もなく、土地所有者及び関係人は、土地台帳地積を標準として換地処分をうけることに同意したものと見做されるのであるから施行規程第三条が憲法に違反することはあり得ないと述べた(立証省略)。
三、理 由
原告等が、いずれも鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区画整理施行地域内に土地を有し、被告から本件各換地予定地指定処分を受けたものであること、被告が右土地区画整理施行者であること、鳥取県知事が昭和二十七年五月二十八日鳥取県告示第二七四号で鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区画整理設計書及び施行規程を認可したこと、鳥取県が市役所を縦覧場所に指定しなかつたこと、県庁内の縦覧場所に「縦覧場所」なる表示をしなかつたことはいずれも当事者間に争がない。
一、先づ原告等は、被告が本件設計書及び施行規程を縦覧に供しなかつたと主張するからこの点について判断する。成立に争のない乙第一号証、同第三、四号証同第七乃至九号証、同第十二号証の二、三、同第十四号証、同第十九号証、証人太田幸夫の証言を綜合すると、鳥取県は本件設計書及び施行規程を昭和二十七年五月十日から同二十七年五月十九日までの間、鳥取県庁において毎日九時から十六時まで縦覧に供する旨の鳥取県告示第二四二号を登載した鳥取県公報の印刷を同二十七年五月八日、県営印刷所で終え、同日午後六時から十二時までの間に、鳥取郵便局から県下百六十八の市町村全部に洩れなく発送し以て土地所有者及び関係人に、その旨を告示し、且つ又右縦覧期間中、被告は鳥取県庁表玄関にあるピンポン台の上に於て、縦覧用と右上に朱書した設計書及び施行規程二部宛竝に図面一部を備えて、その傍に係員として雇員訴外加藤久雄同訴外上田某等が常に一、二名宛、番に立ち毎日午前九時から午後四時迄一般の自由な縦覧に供し、その間、縦覧希望者は多いときは、一日数名あつた事実を認めることができ右認定に牴触する証人神谷常治の証言部分は信用することができないし、その他右認定を覆えすに足る証拠はない。
およそ地方公共団体のなす告示は、その定められた事項を県下各市町村の一般住民に周知させるにあるのであるから、公布すべきものの性質目的に照し相当と認める方法によるべきものと解すべきであるところ、鳥取県においては、鳥取県公布式条例が定められており、該公布式条例には、県条例、県規則、県規程の公布は鳥取県公報に登載して行うのを原則とし、且公報は管下市町村に配布すべき旨が定められているので、鳥取県が本件設計書及び施行規程を告示するに当り、右公布式条例に従つて県公報に登載し、これを県下市町村に発送する方法をとつたものであることが窺われる。そして県公報の効力は発送の時に生ずると解すべきであるから右県公報が発送された昭和二十七年五月八日に、土地所有者及び関係人に適法な告示がなされたものと解すべきである。そうすると右縦覧期間中鳥取県は鳥取県庁において本件設計書及び施行規程を縦覧に供したこと前段認定のとおりであるから、鳥取県は都市計画法施行令第十七条第一項所定の告示及び縦覧を適法にしたものといわねばならない。
なお鳥取県が県庁内の縦覧場所に「縦覧場所」なる表示をしなくとも又鳥取市役所を縦覧場所に指定しなくとも、縦覧が不適法とはいえないこと明らかであるので原告等の右主張はいずれもその理由がない。
(二) 次に原告等は訴外山岡要平、同山岡君が連名で都市計画法施行令第十七条第二項に従い前記施行規程第三条に対し異議の申立をしたのに拘らず、被告が同令第十七条に従いこれを都市計画審議会の議決に付することなく放任したのは違法であるから、被告が認可した右設計書及び施行規程は無効であると主張するので、この点につき判断する。訴外山岡要平、山岡君がいずれも本件土地区画整理地域内の土地所有者で前記施行令第十七条第二項に定められた異議申出適格者であること、右両名が連名で昭和二十七年五月十八日頃(異議申出期間内)に異議申立書と題する書面(甲第二号証の二の訂正前のもの)を被告宛に提出したことは当事者間に争はない。そして成立に争のない甲第二号証の二、証人中西成城の証言を綜合すると、訴外山岡要平等の提出した異議申立書は都市計画法に基く区画整理異議申立書と題しその内容は、異議申立事項第一項として「四九番地(訴外山岡要平所有の鳥取市藪片原町四九番地)の登記面積は四四四、一〇坪であるが、土地家屋調査士による実測の結果は、四七五坪一合五勺の地積となつている。併し現行の鳥取火災復興土地区画整理施行規程によれば土地台帳地積によることとなつているが、それでは差地積三一、〇五坪は無断没収となることとなる。これは明らかに所有権の侵害となるものである。…………依つて前記区画整理施行規程第三条を変更し現地実測の結果を基礎として区画整理を実施せられたい」と記載してあり、第二、三項として訴外山岡君所有の四二番地の三及び四二番地の五の土地に対する仮換地図面に依れば、仮換地は縦前の土地に比し経済的価値が殆んどないから不服である旨記載してあり、第四項として、土地の減歩率を一率にすることは、所有土地の広狭に依り却つて不平等な結果を生ずるので、土地の減歩率を合理的に改正せられたい旨記載してあることが認められる。そして、鳥取火災復興土地区画整理施行規程第三条には、従前の土地各筆は昭和二十七年四月十七日現在台帳地積による旨定められているので、山岡要平等の右異議申立は少なくとも山岡要平に関しては、右施行規程第三条に対する異議であると解すべきは明白であつて、その間に寸疑を容れる余地はない。そうすると、山岡要平は都市計画法施行令第十七条第二項に従い前記施行規程に対し適法な異議の申出をしたものといわねばならない。
被告は右異議が前記施行規程に対する適法な異議申出であつたとしても、山岡要平等はその後該異議を取下げ異議申立書の内容を訂正し陳情として提出したので、被告は陳情書として処理したのであるからこれを都市計画審議会の議決に付さなくても何等違法はないと主張するので、この点につき考えて見るに、都市計画法施行令第十七条鳥取火災復興土地区画整理施行規程第五条を綜合すれば、県が右設計書及び施行規程を十日間土地所有者及び関係人の縦覧に供した後に、知事がこれを認可して初めて右施行規程設計書は有効に成立し、それに基いて知事は従前の土地に対する換地予定地を指定することができるのであるから、縦覧期間中に換地予定地を指定することはあり得ないし、したがつてこれに対する異議の申出は考えられないところであるが、成立に争のない甲第二号証の二同第三号証の五証人中西成城の証言に依り真正に成立したと認める乙第十五号証の一乃至四同第十七号証同第十八号証の一乃至五証人入江昶、山岡君、中西成城、橋浦雄太郎の各証言を綜合すると、山岡要平等が右異議申立書を提出した当時は未だ換地予定地の指定処分はなされていなかつたが、被告は本件土地区画整理を迅速に完了したい考から、右設計書及び施行規程が有効に成立したと仮定して将来なさるべき換地予定地指定処分の計画案を作成しこれを非公式に縦覧させていたので、土地所有者から換地予定地指定処分に対する陳情書が多数提出されていたので、火災復興事務所長訴外中西成城は、山岡要平等から提出された異議申立書をできればこれを陳情書として処理したい考の下に偶々出合つた鳥取市長訴外入江昶に対し右書面を示し、この内容は区画整理全体に対する異議か山岡個人の宅地の換地についての異議か疑わしいから山岡の真意を聞いて貰いたいと依頼したところ、入江はこれを承諾し同月二十日朝鳥取市役所総務課長訴外橋浦雄太郎に対し、右書面を示し、この申立書の異議事項の第一項中に「施行規程第三条を変更し」という文字があるがこれは都市計画遂行の阻害になるから、山岡と折衝しその個所を「依つて前記の実情を充分御斟酌の上現地実測の結果を基礎として」と訂正して貰うよう交渉方を命じた。そこで橋浦は直ちに山岡要平と面会し入江市長の意向を伝え若し申立書中の文字を右の如く訂正することを応諾してくれれば、入江市長も山岡の換地については申立の趣旨に副うよう言つている旨を話したところ、山岡は自分の土地は土地台帳地積と実測地積との間に相当の開きがあるので実測地積を標準として換地を交付してくれるならば、書面の文字を右の如く訂正してもよいといつて、右申立書異議事項第一項中の「依つて前記区画整理施行規程第三条を変更し現地実測の結果を基礎として」と記載してある文字を抹消し、その個所に「依つて前記の実情を充分御斟酌の上現地実測の結果を基礎として」と墨で書加えて訂正した。そして入江市長は橋浦から右訂正された書面を受取り同日これを中西成城に手渡し、右書面の異議事項第一項には施行規程第三条を変更しとあるので施行規程に対する異議の如くとれるので山岡要平の真意を問うたところ、山岡の換地に対する異議であるという意向がわかつたので、前記の如く訂正して貰つた旨告げたので中西は漫然入江市長の言を信用し、山岡要平は右施行規程に対する異議を取下げ換地予定地に対する陳情をしたのに過ぎないと軽信し、同日換地予定地に対する陳情として受付け処理したことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。然しながら前記認定の如く山岡要平が橋浦雄太郎から交渉を受けた際、自分の土地に対する換地は土地台帳地積に依らず実測地積に依られたい旨を主張し、その前提の下に前記の如く文字の訂正に応じたものであり、又抹消した部分と訂正加筆した部分の文字の意義は内容に於ては同一であり、訂正後の異議事項第一項全体を通読するも実測地積に依らないで土地台帳地積に依る換地の不当を攻撃していることは明らかで、前記施行規程に対する異議を取下げたものとは認められないので被告の右主張は採用できない。
更に被告は仮に訂正後の書面が前記施行規程第三条に対する異議と解すべきものとするも、訂正後の書面が提出されたのは既に異議申出期間(五月十日から五月十九日まで)を経過した五月二十日であるから、施行規程に対する異議としては不適法であると主張するけれども、前記認定の如く山岡要平提出の異議申立書は前記施行規程第三条に対する異議として適法のものであるから、叙上の如き経過の下に一部文字が訂正されても、訂正後の異議申立書が訂正前のそれと同一性の失われていない本件に於ては、右異議申立書は十八日に提出されたものとして取扱われるべきものであることは言を俟たないので、被告の右主張も採用の限でない。
思うに、都市計画法施行令第十七条は、都市計画としての土地区画整理の施行は土地所有者及び関係人に重大な利害関係を及ぼすものであるから、公共団体は設計書費用負担方法その他必要事項を定めて告示し十日間土地所有者及び関係人の縦覧に供し、これに異議あるものは、知事に異議を申出ることができ、異議の申出があつたときは、知事はこれを都市計画審議会の議決に付することとし、もつて土地所有者及び関係人の利益を擁護すると共に他面土地区画整理が適正に施行されることを期したものであることは明らかである。元来施行規程に対する異議は、抽象的に施行規程そのものを争うものではなく、施行規程にしたがつて交付さるべき個人の換地との関連において個人の利害関係を中心として異議を申出るのであるから、山岡要平提出の右異議申立書記載の内容が施行規程に対する異議であると解すべきことについては疑義をさしはさむ余地はなかつたのに、不可解にも火災復興事務所長中西成城鳥取市長入江昶は右異議申立書の内容に疑義があるとし、或は施行規程に対する異議は都市計画遂行を阻害すると称して叙上認定の経過の下に山岡に申立書の内容の文字を一部訂正させ、しかも訂正後の申立書の内容は訂正前のそれと全く同一で施行規程に対する異議と称すべきに拘らず、中西は山岡の意思に反しこれを換地予定地の計画案に対する陳情であると誤解し、法的には何等拘束力を有しない陳情書として処理したことは違法といわねばならない。若し右の如く行政庁が自己の便宜のため法律の知識のうすい国民の弱点に乗じ、いわゆる政治的解決に名を藉つて法に依つて認められた国民の権利を奪うならば、右施行令第十七条の存在理由は全く失われるであろう。
そうすると、被告が山岡要平の右施行規程に対する適法な異議を都市計画審議会の議決に付することなく又鳥取県知事が右設計書及び施行規程を認可したのは右施行令第十七条所定の手続を怠つた重大な瑕疵があるので右設計書及び施行規程は無効であると解すべく、したがつて右施行規程に基いて被告が原告に対してなした本件各換地予定地の指定処分も無効であるといわねばならない。そして原告等が即時本件各換地予定地の指定処分の無効確認を求める利益を有することは明らかであるから、爾余の争点に関する判断を省略し、原告等の本訴請求をいずれも正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 和田邦康 高橋文恵 石藤太郎)
(別紙目録省略)
〔参考資料〕
鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区画整理施行規程抜粋
第三条 従前の土地各筆の地積は、昭和二十七年四月十七日現在の土地台帳地積(国有地については国有財産台帳地積台帳がないときは実測地積以下同じ。)による。ただし同日経過後分筆又は合筆をした土地については同日現在における分筆又は合筆前の土地台帳の地積をもつて土地台帳の地積と見做す。
2 前項の日経過後あらたに登録した土地についてはその地積による。
第四条 従前の土地及び整理後の土地各筆の等位及び評定価格は、その位置、区画、形質、地積、用途、固定資産税による評価額、周囲の状況等を考慮して知事が定める。ただし耕地整理法第四十三条第一項第一号乃至第七号の土地には評定価格を附さないことができる。
第五条 知事は、第十四条の規定に準じ従前の土地に対する換地予定地を指定することができる。この場合において従前の土地が登記した賃借権、地上権、永小作権又は質権の目的であるものであるときは、その権利の目的である土地の部分を指定する。
2 換地予定地を指定したとき、またはその指定を変更若しくは更正したときは、土地所有者に通知する。
第十四条 換地は従前の土地の位置、地目、地積、等位、評定価格、利用状況等を標準として交付する。
2 従前の土地の地積僅少であつて整理後建築敷地とするに不適当と認めるもの、及び土地所有者の承諾を得たものは、換地を交付しないで金銭をもつて清算することができる。
第十六条 この事業の施行に要する費用は国庫補助金、鳥取市負担金及び本県において負担するものを除く外予算の定むる所により従前の土地の評定価格を標準として分賦する。
2 知事は、替費地を設定してこれを処分し前項の費用に充てることができる。