大判例

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鳥取地方裁判所 昭和41年(わ)56号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告人長沢に対する強姦の公訴事実は、同被告人は昭和四一年四月二五日頃の午前零時過頃、鳥取市吉方地内面影橋附近を通行中の矢部クニ子(二〇才)を姦淫しようと企て無理に同女を附近の堤防下に引き下ろしその両腕をねじる等の暴行を加え同女の上に乗りかかりその反抗を抑圧して強いて姦淫した、というのである。

被告人長沢の弁護人は、本件公訴の提起前に告訴の取消しがあつたと主張している。矢部クニ子が昭和四一年五月二七日に司法警察員に対して被告人長沢を告訴したことは、同人の鳥取警察署司法警察員小谷喜法に対する同日付供述調書によつて明らかに認められるところである。そこで、告訴取消しがなされたか否かについて考えるのに、証人矢部クニ子同長沢ふさ子、同小谷喜法の各証言および鳥取警察署長の回答書を綜合すると、(一)矢部クニ子は、被告人長沢の妻長沢ふさ子の懇請によつて昭和四一年六月八日に鳥取県八頭郡八東町大字用呂八二七番地の自宅で、捜査担当の警察官に提出されることを承知しながら、被告人長沢に対する処罰を求めない意思で、同人に対する告訴を取消す趣旨の文言を記載した書面に署名押印し、これを長沢ふさ子に交付したこと、(二)長沢ふさ子は、同日午後五時頃鳥取警察署に出頭し、矢部クニ子作成の右書面を稲田警部補を通じて事件担当の小谷喜法警部補に提出したこと(三)当時、事件はすでに検察官に送致されていたが、小谷警部補は、被疑者長沢の妻が右の書面を持参したことから、それが矢部クニ子の作成にかかるものか否かについて疑念をもち、右書面を検察官に送付することはもとより、それが提出されたことを検察官に対して通報もせず自分の手許に放置し、かくして検察官は、同月一一日に被告人に対する公訴を提起したこと、がそれぞれ認められるのである。(右書面を受理せず長沢ふさ子に返還したという証人小谷喜法の証言および鳥取警察署長の回答書の記載は、証人長沢ふさ子の証言に照して措信できない。)

告訴の取消しは、事件が検察官に送致された後であつても司法警察員に対してこれを行なうことができ、取消しの意思が司法警察員に到達した時に告訴取消しの効力を生ずることは、刑事訴訟法二四三条、二四二条に徴して明らかである。本件長沢ふさ子が持参した矢部クニ子作成の書面が告訴取消しの書面であつたことは、証人小谷喜法も認めるところであるから、右書面が提出された昭和四一年六月八日に告訴が取消されたものと解すべきである。そうすると、被告人長沢に対して公訴が提起された同年六月一一日当時には告訴がなかつたことになるので、強姦についての公訴提起は、その規定に違反し無効であるといわねばならない。(児島武雄 金田育三 相瑞一雄)

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