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鳥取地方裁判所米子支部 平成11年(ワ)131号 判決 2000年3月27日

主文

一  被告は、原告に対し、別紙目録記載の土地について、鳥取地方法務局米子支局昭和58年12月13日受付第27712号抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

主文と同旨

第二  事案の概要

本件は、原告が、被告に対し、別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)について、所有権に基づく妨害排除請求として抵当権設定登記の抹消登記手続を請求する事案である。

一  争いのない事実等(証拠掲記のない事実は争いがない。)

1  本件土地は、A(以下「A」という。)がもと所有していた。

2  原告は、昭和37年2月17日から20年間占有を継続したことにより本件土地を時効取得した。

3  原告は、平成11年6月15日、昭和37年2月17日時効取得を原因として本件土地について所有権移転登記を経由した(甲1)。

4  Aは、昭和58年12月13日、株式会社Bとの間で、本件土地について、債務者有限会社C旅館、債権額1100万円、利息月0.79パーセント、損害金年14パーセントとする抵当権設定契約を締結し、同日、抵当権設定登記を経由した(甲1)(以下「本件抵当権」、「本件抵当権設定登記」という。)。

5  被告は、平成8年10月1日、株式会社Bから、本件抵当権の被担保債権の譲渡を受け、それに随伴して本件抵当権の移転を受けた。被告は、平成9年3月26日、その旨の本件抵当権移転登記を了した(甲一)。

6  原告は、昭和58年12月13日から10年間本件土地の占有を継続した。原告は、被告に対し、平成11年10月6日、右時効を援用するとの意思表示をした(本件記録上明らかな事実)。

二  争点

原告は、本件抵当権設定登記がされた昭和58年12月13日から更に10年間占有を継続したことにより本件土地を時効取得したか。

第三  争点に対する判断

一  不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければその後にもとの所有者との間で抵当権設定契約を締結して抵当権設定登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗して抵当権設定登記の抹消を請求することができないが、第三者の右登記後に占有者がなお引き続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、時効取得をもって対抗できるといわなければならない(最高裁昭和36年7月20日判決・民集15巻7号1903頁参照)。そして、時効取得は、原始取得であるから、時効取得者は、第三者に対し、抵当権設定登記の抹消を請求できるというべきである(民法397条)。

二  したがって、原告は、昭和37年2月17日から20年間占有を継続したことにより本件土地を時効取得したが、所有権移転登記を経由しないうちに、株式会社Bに本件抵当権設定登記を経由されたものであるが、右登記が経由された昭和58年12月13日からなお引き続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、株式会社B及び同社から本件抵当権を譲り受けた被告に対し、時効取得をもって対抗できることになる。

ところで、右時効取得に要する期間は、原告が昭和37年2月17日から20年間占有を継続したことにより本件土地を既に時効取得していることからすると、占有の当初は当然に善意、無過失であると認められるから、10年間で足りるというべきである。

そうすると、原告は、昭和58年12月13日から10年間占有を継続したことにより、本件土地をさらに時効取得したといわなければならない。

なお、第三者の登記後の占有の継続をことさら権利保護要件として当初の時効取得に要した期間と同一の期間の占有継続を要すると解さなければならない理由はないし、原告の更なる時効取得により本件抵当権が消滅する以上、本件抵当権の譲受人の地位に立つにすぎない被告に対して抹消登記請求を求め得ることも明らかである。

三  以上によれば、原告の請求は理由があるから認容し、主文のとおり判決する。

(裁判官 足立哲)

(別紙)目録<略>

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