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鳥取地方裁判所米子支部 平成20年(む)33号 決定 2008年9月09日

主文

本件請求を棄却する。

理由

第1請求の趣旨及び理由

本件請求の趣旨及び理由は,弁護人作成の平成20年6月23日付け「証拠開示命令請求書」,同年7月15日付け「反論書」及び同月24日付け「証拠開示命令請求に関する意見書」に記載のとおりであるから,これらを引用する。

第2当裁判所の判断

本件において,弁護人は,①被告人の取調べに関する検察官作成の取調べメモ,備忘録等の全て(以下「本件検察官取調べメモ等」という。)及び②被告人の取調べに関する警察官作成の捜査報告書,取調べメモ,備忘録等の全て(以下「本件警察官取調べメモ等」という。)は,被告人の検察官調書の任意性の有無及び検察官調書及び警察官調書の信用性の有無という争点に関連する証拠として,刑事訴訟法316条の20第1項に基づいて開示されるべきであり,③「事故当事者の言動について」と題する捜査報告書,④「事故前における追跡事実の判明について」と題する捜査報告書及び⑤「交通事故発生時の信号の状況について」と題する捜査報告書の各非開示部分は,いずれも類型証拠であり,検察官請求証拠の証明力を検討するために必要なものとして,③と⑤については刑事訴訟法316条の15第1項3号に基づいて,④については同条項6号に基づいて,それぞれ開示されるべきであると主張している。

そこで,まず,上記①及び②について検討するに,本件検察官取調べメモ等については,本件第6回公判前整理手続期日において,検察官から,検察官が職務上保管しているもの及び個人メモとして保管しているもののいずれも存在しない旨回答がなされており,また,本件警察官取調べメモ等についても,同期日において,検察官から,既に開示済みのもの以外には,存在しない旨回答がなされており,いずれも開示対象証拠が存在しないというのであるから,これらについて開示請求することはできない(なお,仮に,弁護人が指摘するように,存在する証拠について存在しないとしてその開示を免れるような場合があったとしても,そのような場合には,立証責任を課される立場として当該証拠を提出することもできなくなり,立証活動上不利益を被る可能性が生じることになると考えられる。)。

次に,上記③ないし⑤について検討するに,これらについては,いずれも検察官から提示されているところ,③の非開示部分については,関係者から聴取した内容等が記載されているに過ぎないし,⑤の非開示部分については,関係者からの聴取内容や関係機関への照会結果等に基づいて,本件事故当時の信号の状況について検討した内容等が記載されているに過ぎないのであるから,いずれも刑事訴訟法316条の15第1項3号所定の検証調書又はこれに準ずる書面であるとはいえない。また,④の非開示部分については,その作成者が捜査官として関係者から聴取した内容等を記載している部分が含まれるが,同条項6号所定の「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とする」供述録取書等とは,その事実の有無について直接認識等した者の供述を録取したものと解されるから,上記非開示部分は,同条項6号に該当する書面であるとはいえない。

以上の各検討からすると,本件請求は理由がないことになる。

第3結語

よって,本件請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。

(裁判官 三島琢)

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