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鹿児島地方裁判所 平成14年(ワ)340号 判決 2004年7月02日

鹿児島市<以下省略>

原告

同訴訟代理人弁護士

久留達夫

東京都中央区<以下省略>

被告

入や萬成証券株式会社

同代表者代表取締役

被告訴訟代理人弁護士

佐久間洋一

髙澤文俊

主文

1  被告は,原告に対し,442万0257円及びこれに対する平成12年9月27日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は,これを10分し,その6を原告の負担とし,その4を被告の負担とする。

4  この判決は主文第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

被告は,原告に対し,1262万6450円及びこれに対する平成12年9月27日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

本件は,原告が,商品先物取引の受託業務を行う会社である被告に対し,原告が被告に委託して行った商品先物取引により損害を受けたと主張して,不法行為に基づく損害賠償として1262万6450円及び損害額が確定した日の翌日である平成12年9月27日から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金の支払いを求めるものである。

1  争いのない事実

(1)  被告は,商品取引所上場商品の売買取引委託業務等を行う会社である。

(2)  原告は,被告に委託して,平成12年8月24日から同年9月26日までの間商品先物取引を行った(以下「本件商品先物取引」という。)

(3)  本件商品先物取引の経過は,別紙取引経過一覧表のとおりである。

(4)  本件商品先物取引について原告を担当したB(以下「B」という。),C(以下「C」という。),D(以下「D」という。),E(以下「E」という。)は,いずれも被告の従業員である。

(5)  本件商品先物取引に関し原告が被告に差し入れた委託保証金の額は合計1268万円であり,同取引を仕切ったことにより原告が被告から返還を受けた金額は合計119万3500円である。よって,本件商品先物取引により原告に生じた損害の額は1148万6450円である。

2  本件商品先物取引に関する事実経過

この点につき原告・被告双方の主張は,別紙事実経過一覧表のとおりである。

3  争点

(1)  争点1(本件商品先物取引の違法性)

(原告の主張)

被告は,商品先物取引の知識経験がなく,同取引をする意思もなかった原告に対し,利益が上がることが確実であるかのような説明をして,先物取引の危険性を十分説明せずに取引に勧誘し,新規委託者の保護に関する諸規定を無視して,3か月の保護育成期間内であるにもかかわらず20枚以上の取引を行わせ,更に,一定の証拠金を支払えば,損害の発生を防止できるとの虚偽の事実を申し向けるなどして,更に多額の金銭を支払わせ無意味な取引や頻繁な反復売買を行わせ,原告が依頼した仕切りを拒否して,その結果,取引損及び手数料名目で,委託証拠金のほとんどを奪った。

このように,被告は,当初から原告に損失を与える意図がありながらこれを隠し,甘言詐言を用いて原告を本件商品先物取引に引きずり込み,多大な損失を被るかもしれないという原告の恐怖心を利用して,原告から多額の委託証拠金を収受し,原告の意向を全く無視して次々と取引を行わせ,法規を無視して,手数料稼ぎあるいは向かい玉による利益稼ぎを目的としていたものであって,本件商品先物取引は客殺し商法である。

これらの行為は被告の従業員の故意・過失により行われたものである。

(被告の主張)

争う。

別紙事実経過一覧表の平成12年8月25日欄の被告の主張記載のとおり,原告に対し先物取引の危険性等について説明を尽くしており,また,利益が上がることが確実であるかのような説明はしていない。

本件商品先物取引は,原告が自ら収集した情報を基に自らの判断で行ったものである。したがって,原告は,被告の従業員が原告に提供した相場観が1つの見方に過ぎず,相場が同従業員の考えたとおり,述べたとおりに動くものでないことを理解していたし,無意味な反復売買であったということもできない。

被告は,原告の商品先物取引についての知識,理解度,収入資産状況を総合的に判断したうえで,原告の売買注文を受託しており,新規委託者保護義務に違反していない。

別紙事実経過一覧表の平成12年8月30日欄,同年9月1日欄,同月4日欄から同月8日欄の被告の主張記載のとおり,原告が手仕舞いを求め,被告がこれを拒否した事実はない。

(2)  争点2(過失相殺の成否)

(被告の主張)

本件商品先物取引は,原告が自ら収集した取引当時の各種情報によって形成された相場観に基づき,原告の意思と判断により主導的に行われたものであるから,同取引により原告に生じた損害は,同人の意思ないし行為に起因するものであり,仮に原告の本件請求が認められるときは,相応の過失相殺がなされるべきである。

(原告の主張)

争う。

(3)  争点3(損害額)

(原告の主張)

上記争いのない事実(5)記載のとおり,原告は本件商品先物取引により1148万6450円の損害を受けた。

また,原告は本件訴訟を弁護士に委任しており,上記損害額の約10%に相当する114万円は弁護士費用として,被告の不法行為と相当因果関係がある。

(被告の主張)

争う。

第3裁判所の判断

1  掲記の証拠(争いのない事実を含む)によれば,以下の事実が認められる。

(1)  原告は,被告に対し,本件商品先物取引の委託保証金として,平成12年8月28日100万円,同日35万円,同年9月1日195万円を支払っており,同年9月1日現在合計330万円を支払っていた。(甲7)

(2)  別紙取引経過一覧表記載No.23の55枚の売り建玉の取引委託までの本件商品先物取引における原告の建玉の最高枚数は33枚で,これを仕切った後,同表No.23の取引がされている。(争いのない事実)

(3)  本件商品先物取引は,別紙取引経過一覧表記載No.23の売り建玉を同表記載No.27からNo.29の取引により仕切るまでは,原告に434万8350円の利益を生じ,また,同表記載No.23の売り建玉の取引委託までは,原告に431万8250円の利益を生じており,原告に損失を生じた取引もなかったが,同表記載No.23の売り建玉を同表記載No.27からNo.29の取引により仕切った段階で原告に1449万8550円の損失を生じ,同表記載No.24の買い建玉を同表記載No.30からNo.32の取引により仕切った結果,301万2100円の利益を上げ,結局,本件商品先物取引により生じた原告の損害は1148万6450円となった。(争いのない事実)

2  以上によれば,本件商品先物取引のうち,原告に発生した損害との間に因果関係のある取引は,別紙取引経過一覧表記載No.23,No.27からNo.29の取引であると認められる。

そこで,以下,別紙取引経過一覧表記載No.23,No.27からNo.29の取引の適否について,検討する。

(1)  原告本人,証人C及び同Eの各供述,掲記の証拠(争いのない事実を含む)によれば,以下の事実が認められる。

ア 原告は,昭和26年○月○日生まれで,昭和45年にa高校を卒業し,昭和57年ころから家具店を経営していたが,平成2年ころ家具店の営業を止めて,平成3年ころから妻と2人で居酒屋を始めた。本件商品先物取引まで商品先物取引の経験はなかった。(甲1)

原告の所得証明書上の所得は,平成11年分が23万円余り,翌平成12年分が0円(営業所得はマイナス37万円余り)であった。(甲8の1,甲8の2)

イ Bは,平成12年8月24日,a高校同窓会名簿を利用して,原告に電話を架け,商品先物取引の委託を勧誘し,原告は,これに応じ,翌日,Bが原告の勤務先を訪問することとなった。(乙24)

ウ BとCは,同月25日,原告の勤務先を訪れ,原告と面談し,原告を勧誘した。(乙24)

原告は,平成12年8月25日,B及びCから口座設定申込書への記入を求められ,勤務先「b家具販売」,役職「代表取締役」,年収「1000万円以上」,預貯金「2000万円以上」,有価証券「株券300万,投資信託300万」,取引経験「商品取引なし」と記入した。(乙6)

口座設定申込書(乙6)には,「《お取引を始める前に》商品先物取引について『委託のガイド』(乙1の1)により,基本的仕組みの他,下記の投機性,危険性等の内容を充分にご確認ください。」,予測がはずれた場合の対処方法として,決済,追証,難平,両建の各方法を挙げて,それぞれについて手順,メリット,デメリットを記載し,被告に対しこの申込書を提出するにあたり,「委託のガイド」(乙1の1),「お取引を始める前に」及び「予測がはずれた場合の対処方法」の交付及び説明を受け,損失,リスク等について理解しましたとの記載がある。(乙6)

エ Dは,原告が同月28日朝被告に対し委託証拠金として100万円を送金した後,原告に電話を架け,あと35万円預託すれば10枚買えるがどうするかと述べて,別紙取引経過一覧表記載No.2,No.3の取引の委託を勧誘し,原告は,これに応じて,同表記載No.2,No.3の取引を委託し,被告に対し,委託保証金として35万円を送金した。

オ Dは,同月29日昼過ぎ,原告に電話を架け,D自身の相場観及び相場状況を説明して,別紙取引経過一覧表記載No.4からNo.6の取引(同表記載No.1からNo.3の買い建玉の仕切)及び同表記載No.7の取引を勧誘し,原告は,これに応じて,Dが勧誘した上記取引を委託した。

カ Dは,同月30日午前9時20分ころ,原告に電話を架け,灯油の下げがまだ続くという相場観を述べ,別紙取引経過一覧表記載No.8,No.9の取引(同表記載No.7の売り建玉の仕切)及び同表記載No.10の取引を勧誘し,原告は,これに応じて,Dが勧誘した上記取引を委託した。

キ さらに,Dは同日午前10時20分ころ,原告に電話を架け,灯油の値が下がっている状況なので売り建玉を増やした方がよいと述べ,別紙取引経過一覧表No.11(同表No.10の売り建玉の仕切)及び同表記載No.12の取引を勧誘し,原告は,これに応じて,Dが勧誘した上記取引を委託した。

ク 原告は,平成12年8月31日朝,ワープロのインターネット機能を用いて,灯油の相場を確認し,前日の終値より今日の始値の方が高かったので,どんどん上がっていくと困ると考えて,Dに電話をした。

ケ 原告は,被告に対し,平成12年8月31日付けで,習熟期間中に21枚以上の建玉をすることがあり得るとして「建玉増加の申請書」を作成して,提出した。(乙34)

コ 原告は,平成12年8月31日,Dとの電話で,Dが原告に対し85万5000円の追証拠金の送金を求めたことについて,原告がDに対し「明日88万5000円を送らなければいけないということですかね」と問いかけ,これに対しDは「あくまで社長(原告)の判断だから」「いけないということじゃなくて」「もっともと思えばやればいいし,いやまてよ,そんなのはしたくないよとなれば・・・」と答え,原告がDに対し「それを送らなかった場合どうなるんですか」とさらに問いかけ,Dは原告に対し,原告の売り建玉の一部をはずせばよいと述べている(甲3,5から7ページ)。

サ Dは,平成12年8月31日,原告との電話において,追証拠金85万5000円について,下がればすぐ返す,たぶん下がると思う,来週には返還できると思うと述べている。(甲3,6から7ページ)。

シ また,原告は,平成12年8月31日,自分から「買いと売りを両方作っておけば,どっちに転んでも損はないという形になるんじゃないですか」と持ちかけて,両建てを行うことをDに相談している(甲3,7ページ)。

ス 原告は,平成12年8月31日,Dとの電話において,Dに対し,今の時点で止めたら相当な損になるのかと尋ね,Dは,今日の値段を前提にすると110万円程度であると答え,原告は110万しか返ってこないんですかと述べて,追証拠金85万5000円を送金することを了承した。(甲3,8から10ページ)

セ 原告は,平成12年9月1日,Dとの電話で,Dに対し,新規に売りを6枚買いたい,どのくらい資金が必要なのかと持ちかけ,Dは,昨日と同じ値段であれば193万5000円であると答え,原告は,別紙取引経過一覧表記載No.13の取引を委託し,この建玉について,下がったら今日のうちに仕切ってほしいと述べた。(甲1,20ページ,甲3,13から18ページ,原告本人調書35ページ)

ソ 原告は,平成12年9月1日までの委託保証金の現在高,現在建玉内訳が記載され,原告において同日現在まで被告との間の取引について異議がないことを確認した旨を記入した残高及び取引確認書(乙37の2)を同日付で作成した。(乙37の2)

タ 原告は,平成12年9月1日,Fに対し,売りを6枚買い,193万5000円を送金した後,電話がかかってきて,まだ8枚買えるからと言われた,何で余力が出てくるのかと思ったら,追い証がはずれていたと話し,追い証が今日の始めの時点ではずれているのであればそれも教えてほしかったと不満を述べたうえ,さらに8月25日に無理矢理被告から勧誘の電話があり,翌日には契約させられた,説明もよく受けていない,土曜日には断りの電話を入れた,月曜日にはもう取引を始めた,分からない状態で取引を始めた,193万5000円必要だからといわれて,その金額を入れなきゃいけないと思って入金したら,8枚買わされた,こういう形で利益を使っていってまた追い証が発生したら入金しなければいけなくなる,そうはしたくないと不満を述べた。(甲6,79から85ページ)

また,原告は,別紙取引経過一覧表No.13の売り建玉について,その日(9月1日)のうちに下がったら買い戻しをしてくれと言っていて,ストップ安になったのに買い戻してくれなかったと不満を述べた(甲6,88から89ページ)

チ Fは,インターネットで相場を見ているが値段があまり変わっていない,朝見ても昨日の夕方の値段しか載っていないという原告の話を聞いて,原告が見ているのは被告の会員用のページではない,昨日会員用のページを見られるようにパスワードを送ったと述べた。(甲3,92から93ページ,乙18)

ツ 原告は,平成12年9月4日,Dに対し,350万円の利益を原告の銀行口座に送金してもらいたいと思っていたと述べていた。(甲3,20ページ)

3  争点1(本件商品先物取引の違法性)についての判断

(1)  以上のとおり,別紙取引経過一覧表記載No.23の取引は,それまでの売り建玉を仕切った後に行われており,それまでの建玉の最高枚数が33枚であったのに,同表記載No.23の取引は一度に55枚の売り建玉であり,従前の取引に比して取引枚数が急増しているが,原告は,平成12年9月1日,被告に対し追証拠金を預託したのに,追証拠金ははずされ,別紙取引経過一覧表記載No.14からNo.16の売り建玉の取引がされていたこと,また,同表記載No.13の売り建玉について,その日のうちに下がったら仕切ってほしいと依頼していたのに,それがされなかったことを契機として,被告ないしDに対する不満を述べていたから,それからわずか3日後に同表記載No.23の取引により取引枚数を増加させることについては,最終的には原告が了承したにせよ,原告が,そのように取引枚数を増加させる積極的な意向を持っていたとは考え難く,現に,原告は,同表記載No.23の取引に際し,Dに対し,350万円の利益を原告に対し送金してもらうことを考えていたと述べているのであるから,本件商品先物取引による利益を同表記載No.23の取引に投入する意向を強く持ってはいなかったと認められる。

そうすると,同表記載No.23の取引については,最終的には原告の了承を得たものであったとしても,そのような原告の了承に至る過程では,Dの積極的な勧誘が働いていたものと認めるのが相当である。

(2)  そして,原告は,本件商品先物取引まで商品先物取引の経験はなかったというのであり,取引開始から同表記載No.23の取引までの期間がわずか6日しか経っておらず,上記のとおり,原告が口座設定申込書や『委託のガイド』により商品先物取引の危険についてある程度の説明を受けていたこと,同表記載No.1からNo.13までの取引については,格別問題を生じていなかったこと,平成12年8月31日,Dが原告に対し85万5000円の追証拠金の送金を求めたことについて,送金するかどうかは原告の判断であるとの説明を受け,送金しなかった場合の帰趨について自らDに質問し,Dから売り建玉の一部をはずせばよいとの説明も受けていること,同日朝,ワープロのインターネット機能を用いて灯油の相場を確認したうえで,電話でDと協議していること,両建てを行うことをDに相談していることから,原告が商品先物取引の危険性やリスク回避の方法についてある程度の知識を有するに至っていたことが窺われるものの,同表記載No.23の取引による危険を負担させることが許容される程度にまで,原告が商品先物取引に習熟していたとは到底認められない。

以上の習熟度を前提にすると,原告が口座設定申込書に記載していた資産状況を考慮しても,同表記載No.23の取引により一度に55枚の売り建玉を行うことは,原告にとって過大な危険であったと認められる。

(3)  以上によれば,Dが原告に対しそのような危険な取引を勧誘して,原告に別紙取引経過一覧表記載No.23の取引を委託させたことは,新規委託者保護義務に違反する不法行為であり,被告には原告に対し本件商品先物取引により生じた損害を賠償する責任があるというべきである。

4  争点2(過失相殺の成否)に対する判断

(1)  原告が口座設定申込書や『委託のガイド』により商品先物取引の危険についてある程度の説明を受けていたこと,平成12年8月31日,Dが原告に対し85万5000円の追証拠金の送金を求めたことについて,送金するかどうかは原告の判断であるとの説明を受け,送金しなかった場合の帰趨について自らDに質問し,Dから売り建玉の一部をはずせばよいとの説明も受けていること,同日朝,ワープロのインターネット機能を用いて灯油の相場を確認したうえで,電話でDと協議していること,両建てを行うことをDに相談していることから,原告が商品先物取引の危険性やリスク回避の方法についてある程度の知識を有するに至っていたことが窺われることは,上記のとおりであり,被告が,原告に対し,先物取引の危険性を十分説明せずに取引に勧誘したとは認められない。

(2)  加えて,原告の以下の供述に照らすと,被告が,同取引をする意思もなかった原告に対し,商品先物取引に勧誘し,本件商品先物取引をさせたとは認められず,結局,原告は,B及びCが持ち込んできた儲け話に関心があって勧誘に応じたものといわざるを得ない。

ア 口座設定申込書(乙6)について,年収,預貯金,取引経験について実際と異なる記載をしたと供述し(原告本人調書53ページ),その理由について,被告の担当者から,多めに書いて下さい,適当に書いて下さい,知ってる名前を書いてくださいと言われて,そのような記載をしたと供述したり(原告本人調書45ページ),たくさん儲からせていただくために,特別に選ばれた方というセールストークにそぐわないといけないので,見栄えのいいように実際と異なる記載をしたと供述している。(原告本人調書94ページ)

イ B及びCによる本件商品先物取引への勧誘について,自分が卒業したa高校の名前を出されたので雑な扱いができないと思ったと供述し(原告本人調書4ページ),さらに雑な扱いができないと思った理由について質問されると,学校それ自体を気遣って丁寧に応対したとか,学校自体が関わっていると思ったとか,せっかく儲け話を持ってきてもらったのにそれを断ると言うこと自体まずいと思ったなどと供述している。(原告本人調書74ページ,76ページ)

ウ 平成12年8月25日,BとCが原告の勤務先を訪れる前,Cとの間の電話で,BやCの話が本当であるかを確認するために証券会社に電話して聞いてみなくてはいけないと話したと供述している(原告本人調書7ページ)

エ 平成12年8月25日,Cから,奥さんやお店に内緒でお金を都合することができるかと聞かれ,何とかできると答えたと供述している(原告本人調書13ページ)

オ 原告は,平成12年8月28日に,被告に対し委託証拠金として100万円を送金した後,Dからあと35万円の預託を求められ,これに応じたことについて,さらにお金を出せばもっと儲からせてもらえると思って,Dの求めに応じた旨供述している(原告本人調書19ページ)

(3)  また,被告が,原告に対し,利益が上がることが確実であるかのような説明をし,これにより,原告の判断を誤らせて,本件商品先物取引を開始したことを認めるに足りる的確な証拠はない。

(4)  以上によれば,本件商品先物取引により原告に損害が生じたことについては,原告にも相当の過失があったというべきであり,過失相殺として,本件商品先物取引により原告に生じた損害(前記争いのない事実(5)のとおり1148万6450円)から,その65%を控除するのが相当である。

5  争点3(損害額)について

以上によれば,過失相殺後の損害額は402万0257円となり,被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,上記過失相殺後の損害額の約10%に相当する40万円と認めるのが相当である。

よって,被告の不法行為による原告の損害額は442万0257円であると認められる。

6  結論

以上によれば,本件請求は主文の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判官 前澤功)

<以下省略>

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