鹿児島地方裁判所 平成16年(ワ)677号 判決 2005年2月18日
原告 甲
被告 国
同代表者法務大臣 南野知惠子
被告指定代理人 寺本史郎
同 福山命
同 前田信孝
同 古家康彦
同 梶木新一
同 松山和之
同 柳田敏之
同 太田克実
同 丸山京一郎
同 山口智幸
同 市原隆重
同 宇土公弘
同 三重野敬三
被告 乙
同訴訟代理人弁護士 中原海雄
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告らは、原告に対し、それぞれ3053万0525円を支払え。
第2事案の概要
本件は、原告が、税理士である被告乙(以下「被告乙」という。)が昭和49年から同51年にかけて原告に所得が発生していないのに所得があるものとして原告について青色申告を行い、被告国が同申告に基づいて誤って原告から所得税を徴収したと主張して、被告乙に対しては、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として、被告国に対しては、公法上の不当利得返還請求として、それぞれ請求欄記載の金員の支払いを求めるものであると解される。
第3当事者の主張及びこれに対する裁判所の判断
1 被告乙は、原告の主張によっては請求が特定していないとして、本案前の抗弁として原告の訴えを却下する旨の裁判を求めているので検討する。
当裁判所は、平成16年10月15日付け補正命令をもって、原告に対し、被告らに対し請求欄記載の金銭の支払いを求めることができる理由を明らかにするよう命じたところ、訴状及び上記補正命令後に原告が提出した準備書面等によれば、原告の請求を理由づける事実については、その主張内容が具体的に特定されているとはいえないものの、原告の請求それ自体については、上記第2の程度で特定していると認められる。
以上によれば、被告乙の本案前の抗弁は理由がない。
2 次に、本件請求について、請求を理由づける事実としての請求原因事実が具体的に特定されているか否かを検討すると、上記1で述べたとおり、原告が、訴状及び準備書面等をもって、上記事実を具体的に特定して主張しているとはいえず、原告の主張はそれ自体失当であり、理由がないものといわざるを得ない。
また、仮に上記の点をおくとしても、第2で述べたとおり、原告の主張は、被告乙が昭和49年から同51年にかけて原告に所得が発生していないのに所得があるものとして原告について青色申告を行ったというものであり、これに対する被告らの抗弁は、原告が本件を提起した平成16年10月1日に先立ち、原告の主張する請求権(債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権、公法上の不当利得返還請求権)について消滅時効(民法167条1項、724条前段・後段、国税通則法74条1項)が完成しており、被告乙が原告に対し本件口頭弁論期日において消滅時効を援用した旨の主張であって、原告が本件を提起した日が平成16年10月1日であること及び被告乙が原告に対し上記のとおり消滅時効を援用する旨の意思表示をしたことは、いずれも当裁判所に顕著な事実として認められる(なお、還付金等に係る国に対する請求権の時効についてはその援用を要しない(国税通則法74条2項、72条2項))から、被告らの消滅時効の抗弁はいずれも理由がある。
そして、これに対する原告の時効中断の再抗弁の主張は、訴状及び原告が提出した準備書面等によっても、具体的に特定されているとはいえないから、主張自体失当であるといわざるを得ない。
以上によれば、本件請求は、請求原因事実の主張がそれ自体失当であるから理由がなく、仮にこの点をおくとしても時効により消滅しているから理由がない。
3 よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 前澤功)