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鹿児島地方裁判所 平成4年(行ウ)1号 判決

原告

福岡資源化協同組合(X1)

右代表者代表理事

加藤義夫

右訴訟代理人弁護士

吉田徹二

原告

上村辰男(X2)

津田慶志(X3)

津田利幸(X4)

津野一(X5)

上〓フヂ(X6)

樽水春香(X7)

樽水浩二(X8)

樽水實(X9)

柿原弘(X10)

原告

福岡資源化協同組合を除く原告ら九名

訴訟代理人弁護士

西薗亮一

被告

鹿児島県知事(Y) 土屋佳照

右訴訟代理人弁護士

和田久

右指定代理人

奥園義則

田口昇

玉利雅昭

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点1及び3について

1  届出に関する法の規定の概要は、次のとおりである。

土地に関する権利の移転等の届出について、一定の区域について一定の面積以上の土地売買等の契約を締結しようとする当時者は、法一五条一項各号に掲げる事項を、当該土地が所在する市町村の長を経由して都道府県知事に届け出なければならない(法二三条一項)。そして、この届出をしないで土地売買等の契約を締結した者は、六月以下の懲役又は一〇〇万円以下の罰金に処される(法四七条一号)。

当該土地が所在する市町村の長は、届出があったときは、遅滞なく、意見を付して、これを都道府県知事に送付しなければならない(法二三条四項・一五条二項)。

届出をした者は、原則として届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間、届出に係る土地売買等の契約を締結してはならず(法二三条三項)、これに違反して土地売買等の契約を締結した者は、五〇万円以下の罰金に処される(法四八条)。

都道府県知事は、届出があった日から起算して六週間以内に、一定の事由があり、かつ、周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、届出をした者に対し、当該土地売買等の契約の締結を中止すべきことその他その届出に係る事項について必要な措置を講ずべきことを勧告することができ(法二四条一、二項)、右勧告をする必要がないと認めたときは、遅滞なく、その旨を届出をした者に通知しなければならない(同条三項)。そして、勧告又は勧告をする必要がない旨の通知があったときは、法二三条三項による契約締結禁止の効果は消滅する(同項但書)。

都道府県知事が右勧告をした場合において、必要があると認めるときは、右勧告を受けた者に対し、右勧告に基づいて講じた措置について報告をさせることができ(法二五条)、右勧告を受けた者が勧告に従わないときは、勧告に従わない旨及び勧告の内容を公表することができる(法二六条)。ただし、右勧告に基づいて講じた措置についての報告は、刑事罰をもって強制される(法四九条一号)が、勧告自体には従わなくとも刑事罰を課されることはない。

なお、市町村の長は、届出に対する意見を付してこれを都道府県知事へ送付するのみであって、届出をした者に対してなんらかの行為をすることは法上予定されていないから、市町村の長は、届出についての都道府県知事の受付機関にすぎないと解される。

2  行訴法三条五項は、不作為の違法確認の訴えとは、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分又は裁決をすべきにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう」と規定し、同法三七条は、「不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができるし旨規定している。

そして、不作為の違法確認の訴え提起の前提となる「法令に基づく申請」があるといえるためには、法令上特定の者に申請権が認められるとともに、これに対して、行政庁においてなんらかの公権力の行使にあたる行為をすべき義務があることを要すると解すべきである。そこで、以下においては、法二三条一項に基づく届出が右の意味での「法令に基づく申請」に該当するか否かを検討する。

前示1によれば、届出を受けた都道府県知事は、一定の場合は、届出をした者に対し、届出があった日から起算して六週間以内に、必要な措置を講ずべきことを勧告することができ、都道府県知事において、勧告をする必要がないと認めたときは、遅滞なくその旨を届出をした者に通知しなければならないところ、勧告又は勧告をしない旨の通知は、いずれも届出のあった日から六週間以内に行わなければならず、いずれかの措置をとったときは法二三条三項による契約締結禁止の効果は消滅するとされているものの、いずれの措置もとることなく日時を徒過しても、法二三条三項による契約締結禁止の効果は消滅すると解されるから、期間内に勧告又は勧告をしない旨の通知のいずれかの措置をとるべきことは都道府県知事の職務上の義務とはいえても、都道府県知事が届出に対して応答すべき義務があるとまではいい難いのであって、むしろ、届出は、届出のあった日から六週間以内に勧告をするかしないかを都道府県知事において判断する機会を与えるものにすぎないと解すべきである。

そうすると、届出は、都道府県知事においてこれに対してなんらかの公権力の行使にあたる行為をすべき義務を課すものとはいい難いから、「法令に基づく申請」にはあたらないというべきであって、本件届出が「法令に基づく申請」にあたることを前提とする原告らの本件訴えは、いずれも不適法というほかはない。

なお、原告らは、法二三条三項所定の売買契約締結禁止の期間の起算点となる「届出をした日」とは、届出行為がされた日をいうのではなく、都道府県知事の機関である市町村長が届出を受理、すなわち有効な届出として受領した日をいう旨主張し、届出に対応する受理行為の存在を主張しているところ、法二三条三項の「届出をした日」及び法二四条二項の「届出のあつた日」とは、都道府県知事の受付機関である市町村の長が届出を適式・適法なものとして受領したか、不適式・不適法なものとして返戻したかにかかわらず、届出が現実に提出された日をいうのであって、都道府県知事もしくは市町村の長の届出の受理行為なるものを観念する余地はないと解すべきである(付言するに、前示第二の一の5の事実からすれば、平成四年七月二九日及び八月一日になされた本件届出は届出としての効果を生じており、したがって、本件においては、法二三条三項による契約締結禁止の効力は既に消滅しているものと解されるところである。)。

二  結論

以上の次第で、原告らの本件訴えは、原告組合の予備的請求も含めて、いずれも不適法であって、却下を免れない。

(裁判長裁判官 小野洋一 裁判官 下野恭裕 鈴木正紀)

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