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鹿児島地方裁判所 昭和38年(わ)39号 判決 1963年7月18日

被告人 丸田隆彦

昭九・四・三生 飲食店営業

主文

被告人を懲役六月に処する。

未決勾留日数中九〇日を右刑に算入する。

但し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、右猶予の期間中被告人を保護観察に付する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は暴力団小桜組の幹部園田尊の若い者頭であるが、同じく園田の配下である庵下一人、小松昇らが昭和三七年一〇月一三日午後五時四〇分頃中村こと近松博好を鹿児島市郡元町鶴池空港待合所から同市新屋敷町五九番地の右園田方に連行し園田と共々同人を脅迫して金一〇万円を喝取しようとしたが逸早く警察官に探知されて未遂に終つた事件について右園田、庵下、小松らが逮捕されたことにつき、同輩の山口靖雄から岩崎充が前記日時頃同空港待合所及び前記園田方において近松と同席していた関係で右事件の実情をよく知つている事実を聞き知り、更に山口から、そのときの状況から、近松が通報したとは考えられない、と聞かされ、岩崎が右事件を警察に通報したものと推測して憤慨し、同人を畏怖させようと考え、同月一九日の夕刻頃、前記園田方から同市平之町一一九番地の右岩崎方に電話をかけ被告人の前記素性をよく知つている同人に対し「丸田だが今度はおやじ(園田のこと)の事でいろいろお世話になつたそうですね、あんたが警察に知らせたんでしよう。私も今度関西方面の極道者から素人に密告されて黙つているようでは極道者の端くれにも入らんと言われたので、誰が警察に知らせたかを調べてお礼をする、警察が頼みになるのであればこの電話のことも知らせたらどうか。」と申し向け前記小桜組の威力を背景にして同人の身体に如何なる危害を加えるかも知れない旨暗示して同人を畏怖させもつて前記恐喝未遂事件の捜査若くは審判に必要な知識を有する岩崎を脅迫するとともに同人に対し強談威迫の行為をしたものである。

(証拠の標目)(略)

(法令の適用)

被告人の判示所為のうち脅迫の点は刑法第二二二条罰金等臨時措置法第三条第一項、第二条第一項に、証人威迫の点は刑法第一〇五条ノ二罰金等臨時措置法第三条第一項、第二条第一項に該当するが、右は一個の行為が数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項前段、第一〇条により重い脅迫罪の刑で処断することとし、所定刑中懲役刑を選択し、所定刑期範囲内で被告人を懲役六月に処し、同法第二一条により未決勾留日数中九〇日を右刑に算入する。なお諸般の情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予し、同法第二五条ノ二第一項前段により右の猶予の期間中被告人を保護観察に付し、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 松村利智 富沢達 近藤寿夫)

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