鹿児島地方裁判所 昭和47年(ヨ)112号 判決 1973年8月08日
申請人 甲野太郎
右訴訟代理人弁護士 井之脇寿一
同 亀田徳一郎
同 小堀清直
被申請人 日本瓦斯株式会社
右代表者代表取締役 津曲貞雄
右訴訟代理人弁護士 松村仲之助
同 池田
主文
本件申請を棄却する。
訴訟費用は申請人の負担とする。
事実
第一、当事者が求めた裁判
申請人
「申請人が被申請人の従業員として雇傭契約上の地位を有することを認める。被申請人は申請人に対して昭和四七年九月より申請人から被申請人に対する解雇無効確認請求事件の判決確定に至るまで、毎月末日に金五一、四六六円を支払わなければならない。」との裁判。
被申請人
「本件仮処分申請を却下する。」との裁判。≪以下事実省略≫
理由
一、申請人が昭和四二年八月一日に被申請人に嘱託として試用採用され、調定課集金員を命じられ、同年一一月一日に嘱託として本採用され、昭和四七年五月二三日まで調定課集金員として被申請人の集金業務を行ったことは、当事者間に争いがない。
二、申請人が被申請人の労基法にいう労働者であったか否かについて、
≪証拠省略≫を総合すると、次の事実が一応認められる。
(一) 被申請人が、その需要家に対するガス料金の集金業務を申請人に行わせるについて、被申請人と申請人との間に、次のとおりの条項等を含む契約(以下「本件集金人契約」という)が結ばれた。
(1) 被申請人は申請人に対し、被申請人の供給区域内におけるガス料金、およびその他の料金の集金業務を委託し、申請人はこれを受託する。申請人は受託業務処理に関する一切の行為を善良なる管理者の注意をもって処理する。申請人の分担区域は需要家の件数、金額、その他被申請人の都合によって変更することができる。
(2) 申請人は集金業務の取扱い、および服務についてすべて被申請人の指示に従うものとする。
(3) 申請人はすべて被申請人の発行する領収証により集金し、集金した金員を所定のとおり確実に納入しなければならない。ただし病気その他やむを得ない事由のため集金不能となるおそれがあるときは、その旨を付して領収証を直ちに被申請人に返却しなければならない。
(4) 被申請人は集金手数料を所定の計算により毎月定められた日に申請人に支払う。
(5) 申請人がその責に帰すべき事由により被申請人に損害を与えたとき、または集金した金員を納入しないときは、申請人、およびその連帯保証人は連帯してその損害、もしくは金員につき、被申請人の定める期日までに賠償、または納入しなければならない。
(6) 申請人が次の各号のいずれかに該当するときは、直ちにこの契約を解約することができる。この場合申請人は被申請人に対して解約による一切の損害を請求することはできない。
1、集金成績が著しく不良で向上の見込みがないとき。
2、申請人の年令、素行、健康状態、および信用状態がこの集金業務の処理に適当でないと認められるとき。
3、申請人が被申請人に損害を与えたとき、または集金した金員を納入しないとき。
4、納入すべき金員を他へ流用したとき。
5、被申請人が交付した以外の領収証を使用したとき。
6、故意または過失により集金困難な状態にいたらせ、または被申請人の信用を毀損したとき。
7、申請人が所定の場合の連帯保証人の変更手続を怠ったとき。
8、その他この契約の趣旨に違背したとき。
(7) 申請人、被申請人においてやむを得ない事由によりこの契約を解約しようとするときは、期間一箇月前までに相手方に予告しなければならない。
(8) 期間満了の一箇月前に申請人、被申請人いずれも解約の申入れがないときは、さらに一箇年有効とし、以後も同様とするが、契約期間は通算して三箇年を越えないものとする。
本件集金人契約は期間を一年として結ばれた(但し、その始期を、申請人が試用採用された昭和四二年八月一日としたものであったか、本採用された同年一一月一日としたものであったかは、これをうかがうに足りる疏明資料はない)が、被申請人が申請人と同様の集金人一〇数名について右(8)の条項に基く更新、再契約時期を統一して、その手続事務を簡明にする目的から、昭和四四年三月一日に期間を同日から昭和四五年二月二八日までの一年間とする契約が結ばれたが、昭和四七年二月末日を経過した後も、特段再契約手続は行われなかった。
(二) 申請人の日常の集金業務は次のように行われていた。
午前八時四〇分までに被申請人の事務所に出社し、前日集金して被申請人の宿直員に保管を委託してあるガス料金を受領し、これを被申請人の経理担当者へ納入する手続、および集金のための被申請人発行の領収証の受領、集金業務に関する連絡、打合せ等を行い、概ね午前一〇時頃までの間に集金業務に出る。概ね午後四時頃から午後五時頃までの間に帰社し、当日集金した料金を各集金人用の金庫へ入れ、その保管を被申請人の宿直員に委託して退社する。昭和四五年六月頃から、出社、退社時刻をタイムレコーダーで打刻するようになるまでは、午前八時四〇分より後の出社を遅刻、午後五時より前の退社を早退とする取扱いであった(但し、右の遅刻、早退が報酬等にどのような影響を及ぼすものとされていたかは不明である)がタイムレコーダーを打刻するようになってからは、遅刻、早退という取扱いはなくなり、昭和四七年一〇月頃からタイムレコーダーの打刻も廃止されたが、右の点には変りはない。休日でない日に全く集金業務に従事しない場合には、理由を付した休務届を被申請人に出す。
(三) 各集金人に対する集金先の割当は、なるべく各集金人の集金地域がまとまり、集金口数(ガス使用量メーター毎に発行されるガス料金領収証の枚数)が平均化するように被申請人によって割当が行われており、昭和四七年八月当時における集金人一六名に各担当領収証枚数(以下単に「枚数」という)は約二、二〇〇枚ないし約二、七〇〇枚で、平均二、五六六枚であり、申請人の昭和四七年二月から同年四月までの各月の担当枚数は二、六二三枚ないし二、六五二枚であった。そして、各集金人に対する領収証の交付は、被申請人の検針員による使用量の検針が行われた後概ね一週間位の間に逐次行われている。
(四) 集金人に対する報酬は、昭和四五年一〇月までは、毎月、集金した領収証一枚について八円、および集金金額の一〇〇〇分の八の割合の手数料と集金率が九九パーセントを超えた場合には奨励金月額六、〇〇〇円、二年連続勤務について精勤手当月額五〇〇円が支払われていたが、昭和四五年一一月以降は、次のように改められた。
(1) 集金手数料、集金した領収証一枚について一九円(昭和四六年一一月以降は二〇円)。
(2) 奨励金、早収料金(使用量検針後二〇日以内に料金を支払う場合の料金。右期間経過後に支払う場合には遅収料金として、早収料金に五パーセント加算される)による集金の枚数の担当枚数に対する割合と、集金金額の担当金額に対する割合との算術平均が九六パーセントを超えた場合に、一パーセントごとに二、五〇〇円(九九パーセントを超えた場合に一〇、〇〇〇円となる)。
(3) 精勤手当、勤務年数一年について月額八〇〇円。
毎月支払われる報酬は右のとおりであり、申請人が支払いを受けた昭和四七年二月分ないし同年四月分の報酬は五五、二六九円ないし五九、五〇八円であったが、そのほかに例年夏季にお盆手当、年末に餠代の名目で合計して毎月の報酬の約一・五倍位の金員が支払われている。しかし、被申請人の一般従業員に対して支払われている退職金は、集金人に対しては支払われない。
右のように一応認められ、右認定を妨げるに足りる疏明資料はない。
被申請人は、被申請人と申請人との契約関係は委託契約関係であるから、申請人は被申請人の労基法にいう労働者ではなかったと主張し、本件集金人契約の契約条項において、「被申請人は申請人に集金業務を委託し、申請人はこれを受託する」という文言が使用されていることは前記認定のとおりである。しかしながら、契約の法的性質は契約のうちの一条項に用いられた文言によって決まるものではなく、契約条項全部、およびその履行の実態を合わせた契約関係の全体によって決まるものであり、かついわゆる混合契約、無名契約等といわれる実定法の典型契約に該当しないものがあることはいうまでもないことであり、他方、労基法第九条は、事業主との契約関係が民法上の雇傭であることを同法上の労働者たる要件としてはおらず、事業主に使用される者で、その労働に対する対価の支払いを受ける者をもって労働者としているのであるから、労基法上の労働者であるか否かは、結局は事業主に「使用される者」といえるか否か、換言すれば、その労務の給付を事業主の指揮監督に従って行っている者といえるか否かによって決められるべきものということができる。ところで、前記認定事実によると、本件集金人契約は、その契約条項において、申請人が集金業務処理に関する一切の行為を善良なる管理者の注意をもって処理すべきことが定められているほかに、申請人は集金業務の取扱い、および服務についてすべて被申請人の指示に従うべきこと、すなわち、申請人が集金業務の労務を給付するについては、事業主である被申請人の指揮監督に従うべきことが定められており、その履行の実態においても、労務に対する報酬である手数料の額に直接影響を及ぼすことはないけれども、一般の休日以外は出社、退社の時刻が定められていて、遅刻、早退の取扱いが行われていたこともあり、平日に全く集金業務を行わない場合には、他人が代って集金業務を行う必要の有無にかかわらず休務届を提出することになっており、また集金した料金の保管、納入方法も被申請人の定めた一定の方法によって行うことになっている等、申請人がその労務の給付について自主的に決定し得る範囲は、当該の日の集金先をどこにするか(但し、この点についても、原則として早収料金期間内に集金を行わなければならないことと、被申請人から申請人に対する領収証の交付日とによって、おのずから或る程度の制約が加わる)、その集金順序をどのようにするか、集金先を回るための交通用具、機関の使用方法等極めて限られた範囲に過ぎないもので、被申請人の指揮監督を受ける程度、範囲が、申請人が自主的に決定し得る程度、範囲よりもむしろ大きかったということができる。してみると、申請人は事業主である被申請人の労基法にいう労働者の地位にあったものというべきである。
三、被申請人が申請人に対して、昭和四七年八月七日付内容証明郵便によって、同年九月一一日をもって申請人を解雇する(本件集金人契約を解約する)との意思表示をし、これがその頃申請人に到達したこと(本件解雇をしたこと)は当事者間に争いがない。
四、申請人は、本件解雇は不当労働行為であるから無効であると主張し、≪証拠省略≫によると、昭和四五年頃に申請人を含む集金人らが、他の労働組合の役員から、労働組合の結成等労働組合に関する話を聴いたことがあること、昭和四六年一〇月頃に集金人全員が連名で、集金手数料の増額等労働条件の改善要求を記載した書面を被申請人に提出したことがあることが一応認められるけれども、右の各事実について申請人が主導的活動をしたこと、被申請人の集金人に対する監督的地位に在る者が、右認定の前段の事実を知っていたことを窺わせる疏明資料は何もないこと、および右認定事実が行われた時期と本件解雇の時期との間には、相当長期間の経過があることなどに照らして考えると、右認定事実に申請人が関与したことと本件解雇との間に因果関係があるものとは考えられず、他に申請人が労働組合法第七条第一号前段に挙げられているような行為をしたことを窺わせる疏明資料は何もないから、申請人の前記の主張は到底採用できない。
五、本件解雇は解雇権の濫用であるから無効である、という申請人の主張について、
(一) 申請人が被申請人に医師の診断書、欠勤届を提出して、昭和四七年五月二四日から集金業務を休務するようになったこと、同年六月二〇日頃、申請人が被申請人に対して、翌日から出勤する旨の通知をしたことは、当事者間に争いがない。
(二) 申請人は、同人が昭和四七年五月二四日から欠勤するようになったのは、同月二三日に集金業務に従事中、急に手足のしびれと痛みを感じるようになったためであり、右症状は、昭和四五年頃に自転車で集金業務に従事中、田の土手から転落して受けた傷害の後遺症が原因であると主張し、申請人本人の供述のうちには、右主張にそう趣旨の供述、および、集金業務に従事中犬に咬まれたことがあり、また、集金した金員を入れた重い鞄を持歩くことが、申請人の症病の原因である旨の供述がある。しかしながら、≪証拠省略≫を合わせて考えると、申請人が昭和四五年中に欠勤したのは、一月二九、三〇日、七月三〇日、八月一四日、九月三〇日のみで、その理由はいずれも家事都合と届出でられていたこと、申請人は昭和四六年九月初頃から同年一〇月末頃までの間欠勤したが(但し、その間に短期間出勤した期間がある)、その理由は自宅で重量物を持上げたことから、腰痛が著しく、殊に歩行時、体動時等に激しく、躯幹運動も制限されるという症状となったことであり、児玉國秀医師によって、先天性の腰椎分離症であるが、重量物の持上げによって右のような症状を発生したものと診断され、右欠勤について健康保険法に基く傷病手当金(業務外の傷病に因る休業に対して支払われるものである)の給付を受けたこと、申請人は昭和四七年五月二三日に医師東条新蔵によって、低血圧症、腎炎により一〇日間の安静治療を要するものと診断され、同年七月七日に医師児玉國秀によって、変形性頸椎症、根性坐骨神経痛によって同年八月末日まで通院加療の必要ありと診断されたことが一応認められ(る。)≪証拠判断省略≫右認定事実に照らして考えると、申請人本人の前掲記の趣旨の供述はたやすく信用できず、他に、申請人が昭和四七年五月二四日以降欠勤する理由となった病気が、申請人が被申請人の業務上受けた負傷、もしくは、被申請人の集金業務に従事したことを原因とするものであることを窺うに足りる疏明資料はない。
(三) 前記(一)の当事者間に争いのない事実と≪証拠省略≫を合わせて考えると、次の事実が一応認められる。
昭和四七年六月二〇日頃、電話で、申請人から被申請人の調定課長久保清高に対して、翌日から出勤する旨の通知があったが、その際申請人が、鹿児島大学医学部附属病院、鹿児島市立病院で検査を受けたが、なお他の病院で精密検査を受けるよう指示されている旨を述べたので、久保は申請人に対して、同日被申請人の嘱託医である島本医師の診断を受けるよう指示した。そこで、申請人が島本医師の診断を受けたところ、症状として手のしびれ、体のむくみ等のほかに、眼が充血していたので、島本医師が伊佐敷眼科病院で眼の検査を受けることを指示し、申請人は右病院に赴いたが、伊佐敷医師が出張不在で検査を受けられなかった。しかし、島本医師が問合わせたところ、伊佐敷医師が翌日は在院するということであったので、申請人に対して、翌日伊佐敷病院で検査を受けたうえ、再度島本医院へ来るよう指示し、その際、島本医院へ赴いていた被申請人の菅営業部長および久保調定課長から申請人に対して、翌日の島本医師の診断の結果を被申請人に通知するよう指示し、申請人はこれを諒承した。ところが、翌日、申請人から被申請人に対して何も通知がなかったので、菅営業部長の方から申請人に電話で問合わせたところ、申請人は、島本医師を信頼できないので、同医師の診断は受けない旨述べたが、同医師が被申請人の嘱託医となっているので、同医師の診断を受けるよう説得した結果、申請人はこれを諒承し、同医師の診断を受けて、その結果を被申請人に通知することを約した。しかるに、申請人は結局島本医師の診断を受けず、被申請人に対しても何らの通知連絡をしないまま日を過し、同年七月一二日頃、他人に依頼して被申請人に対して、同月七日付医師児玉國秀の、申請人が変形性頸椎症、坐骨神経痛のため通院加療中であるが、同年八月末日まで通院加療を要する旨の診断書、および同年八月末日までの欠勤届を提出した。その後本件解雇に至るまでは申請人、被申請人相互に何らの通知連絡もしないまま経過した。
右のように一応認められる。≪証拠判断省略≫
右認定事実によると、申請人の、昭和四七年六月二〇日頃、申請人が被申請人に対して、集金業務に翌日から従事することを通知したところ、被申請人が何らの理由を示すことなく申請人の労務の受領を拒絶した、申請人は右の後も通院治療しながら集金業務を行う心算であったので、被申請人からの出社命令を待っていたところ本件解雇となった、という主張は、いずれも採用できない。
(四) ≪証拠省略≫を合わせて考えると、次の事実が一応認められる。
(1) 各集金人が各需要家のもとにガス料金の集金に赴く日は、概ね毎月一定するように行われているが、申請人は、予定された集金日に料金の支払いが受けられなかった場合に、需要家に対して厳しい苦情を言うなど、その需要家に接する態度が需要家の不満を買うことが、他の集金人に比して著しく多く、被申請人に対する需要家からの苦情の申入れが絶えず、なかには申請人に対する料金の支払いを拒否されたため他の者に集金をさせざるを得なかったこと、あるいは、料金を申請人に支払うことを拒否して、みずから被申請人に持参支払う者もあった。
(2) ガス料金は、ガスメーターごとに計算され、メーターが設置されている所(ガス使用場所)において支払いを受ける建前となっているが、需要家の勤務の都合等の事情で、通常の集金時間中はガス使用場所に不在がちであるため、需要家の勤務先で集金しなければならない場合、同一需要家が数箇所でガスを使用し、その料金を一括して支払う場合など、被申請人が割当てた集金担当地区外で集金をしなければならない場合が或る程度あり、このような場合、実際に料金の支払いを受ける場所を割当担当地区とされている集金人が、本来の担当集金人のために集金をしてやること、また、集金人が短期間欠勤し、当該集金人の担当集金先で早収料金による支払期限の切迫したものがある場合には、他の集金人が代って集金してやること(右いずれの場合も、その集金手数料は、本来の担当集金人が集金したものとして被申請人から支払いを受け、かつ実際に集金を行った集金人との間でも特段手数料の精算等を行っていない)が集金人相互の間で慣行的に行われているが、申請人は右のような他の集金人のための集金を快く引受けないことがあり、また引受けてもその集金の仕方が不親切であったり、さらには集金しながらこれを担当集金人に交付しなかったために、被申請人に対しては担当集金人が立替納付しなければならなかったこともあったりしたため、申請人は集金人間で嫌悪されるようになっていた。このため、申請人が昭和四七年五月二四日から欠勤するようになり、その欠勤継続期間が予測できなかったので、調定課長久保清高が、申請人に割当ててあった集金先を、他の集金人に分担集金すること(この場合、集金手数料は実際に集金した者に支払われる)を依頼したが、当初は全集金人がこれを拒否し、その後もようやく四名のみが被申請人の業務上の命令であれば応ずると申出でたのみで、申請人に割当てられていた地区の約三分の一を分担できたに過ぎなかった。
右のように一応認められ(る。)≪証拠判断省略≫
(五) 右(二)ないし(四)に認定、判断したところによると、本件解雇をもって解雇権の濫用であって無効であるという申請人の主張は採用できず、前記認定の本件集金人契約の契約条項(6)の2に定められた解約事由があり、労働基準法第二〇条、および右契約条項の(7)所定の予告期間をもってなされた本件解雇は有効なものと解するのが相当である。
結論
以上のとおりであるから、他の点について判断するまでもなく、申請人は本件解雇によって被申請人の集金人たる地位を失ったもので、本件申請はその被保全権利の存在について疏明がないものといわなければならず、保証をもって疏明に代えるに適しない事案と考えられるので、保全の必要性の有無について判断するまでもなく、本件申請は理由がないものといわなければならない。
よって、本件申請を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 寺井忠)