鹿児島家庭裁判所 事件番号不詳 決定
少年 T(昭一七・二・八生)
主文
この事件について少年を保護処分に付さない。
理由
(罪となるべき事実)
少年は、少年M、同F、および同Sと○○商業高校二年生A子(当時一六年)を強いて姦淫しようと企て、共謀のうえ、昭和三四年六月一八日午後四時五〇分頃、同女を○○市○○町○○○番地○○産業株式会社○○鉱業所に連れ込み、同日午後八時頃、右鉱業所○○工場附近において、Sは同女を同所に投げ倒して仰向けに押えつけその口を塞ぎ、M、Fおよび少年は同女の両足を押えつけ、ズロースを引き脱ぐ等の暴行を加え、同女の反抗を全く抑圧したうえ、M、F、およびSは、順次強いて同女を姦淫し、もつて共同して強姦したものである。
(処遇の理由)
1 本件は、昭和三四年一二月二五日鹿児島地方裁判所から少年法第五五条により当裁判所に移送されたものであるが、その理由とするところは、少年が一七歳で非行歴が浅く、また以前に保護処分を受けた経験もないこと、本件犯行後少年は前非を悔い、その保護者も被害者の慰藉に努力し、かつ少年の保護監督に誠意を示している事実、その他諸般の事情を勘案すれば、少年に対しては刑事処分をもつて臨むよりも、むしろ、少年を充分に観察したうえ然るべき保護処分に付するを相当と認める、というにある。
2 しかして、少年の資質面を観るにその知能は新田中B式I、Q=102で普通域にあり、性格面ではやや芯の乏しい、自主的判断の伴わない点が認められるもその他特に矯正を要する偏倚もなく、正常域にあることが認められる。
本件は、少年にとつて偶然性のもので、犯行にあつても追従的・消極的立場に終始し、しかも少年だけは被害者に対する同情・憐憫の情から姦淫の目的を遂げていないことが認められる。少年には非行歴はなく、今回が初発非行であるが、本件当時の生活態度が乱れていたものとも認められず、本件後強く反省して現在更生の意欲に燃えておる点などから今後少年に再非行反覆の懸念があるものとは考えられない。
少年は、幼少にして両親を失い、その後は祖母と保護者(叔母H)の手によつて養育されてきたものであるが、現在、保護者との精神的結びつきが極めて強いものと認められる。保護者は本件後少年が退学するや直ちに大阪市在住の少年の叔母(K)に少年を預け、同地で少年を就職させてその更生を図り、また本件被害者に対しては、とても裕福とは思われない家計から金二〇、〇〇〇円の慰藉料を支払うなど、その被害の回復に誠意をもつて努力したもので、これらの点からその保護能力は期待するに足ると考えられる。そして、現在、少年の大阪市における新職場も決定し、少年は近く上阪し上記叔母の許から通勤することになつており、かくして、特に少年の環境調整の必要があるものとは認められない。
以上の諸事情を各綜合すると、少年の健全な育成を期すために、保護処分に付する必要はないと認めるので少年法第二三条第二項により主文のとおり決定する。
(裁判官 池田久次)