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鹿児島家庭裁判所 昭和40年(少ハ)5号 決定 1965年11月02日

本人 G・K(昭二〇・一・三生)

主文

本人を昭和四一年六月二三日まで継続して特別少年院に収容する。

理由

本人は、昭和三九年一〇月二四日恐喝、暴行保護事件について当裁判所において特別少年院送致の決定を受け、大分少年院に収容されたものであるが、昭和四〇年一月三日満二〇歳に達し、同年一〇月二三日をもつて送致後一年の期間満了となるところ、同年同月一三日前記少年院々長須永広次から、本人の院内成績は当初概ね良好の状熊にあつたが、同年五月一八日に逃走事故を起したため同年同月三一日降級処分を受け、本申請当時未だ処遇の最高段階に達しておらず、かつ性格的にも健全な意欲を持続させにくい傾向が相当根強く残存していて、その犯罪的傾向が未だ矯正されていないとの理由により、本件収容継続申請がなされた。

よつて収容継続の当否について審案するのに、大分少年院分類保護課長横山初夫、本人G・Kおよび保護者G・Tの各供述を綜合すると、本人は当裁判所において、前記特別少年院送致決定の告知を受けた際、不満の念を抑えきれず、担当裁判官に対して反抗的な言動におよんだこと、大分少年院に収容されてからは次第に気分も落着き、同院内で自動車運転免許を取得しようとの目標もあつて、昭和四〇年五月に至るころまでは、院内での成績は概ね良好であつたこと、そして、同年五月に同院内の自動車課編入選考試験を受験したが、成績思わしくなく、同院在院中の友人の話などから合格覚束なしと即断して、にわかに精神的動揺をきたし、自棄的な気分に陥入つていたところ、偶々隣室の在院者から逃走計画の話をきかされ、同年五月一八日午後四時五分ころ同人らに追従して軽挙大分少年院から逃走を計つたが、約五分後に同少年院に連れ戻されたこと、この逃走事故により同年同月三一日謹慎二〇日間の処分をうけるとともに、院内処遇も一級の下から三級に降級されたが、その後再度落着きを取戻してこれといつた事故もなく経過し、本件申請当時の処遇は二級の上の段階にあること、本人は現在も院内で自動車運転免許を取得する希望を持ち続けており、保護者もその希望を受け容れる意向を有していること、仮りに本人が現在の院内成績を持続しうるものとすれば、近く自動車課編入選考試験に合格することは難くなく、また昭和四一年四月上旬には仮退院が許されるものと予測されること、大分少年院収容当初、本人は過感無気力で社会適応意欲に乏しく、その後の収容教育の結果一応院内での生活規律に順応しようとする意欲をみせはじめるようになつたが、上記のような資質的負因に照らすと一般社会での健全な適応性を身につけさせるためには、なお相当期間にわたる院内での矯正教育を施す必要があり、更に出院後も多少の期間本人に対する適切な専門的指導ないし援護を必要とすること、などの事実を認めることができる。以上の諸事実に照らすと、現段階で本人を一般社会に復帰させるにたるだけの犯罪的傾向の矯正は未だ果されていないというべきであるから、本人に対し更にその収容を継続して矯正教育を施すのが相当であると思料される。

次に、その期間をいかほどに定めるのか相当であるかについて考えるに、収容継続決定をするにあたり仮退院後の保護観察期間をも含めて収容継続期間を定めうるかどうかについては学説、判例上争いがあつて、論者の説くところ必らずしも帰一しない。おもうに、少年院での矯正教育の目的は、対象少年の性格や生活熊度などを改善して、その犯罪的傾向を除去することにより、健全な社会生活に適応しうる能力を身につけさせることにあるが、このような目的は必ずしも一般社会から隔離された施設内での教育のみによつて完全に実現されうるものではなく、しばしば、これに引き続き、かつこれが成果を前提とした一般社会の場での教育的処遇の段階(仮退後の保護観察)が要求されるのであつて、かかる場合には、両者一連の相即関係をもつて前記矯正教育の目的に奉仕するものにほかならない。すなわち、少年の資質や出院後の受け入れ熊勢などの如何によつては、犯罪的傾向の未矯正を理由に相当期間身柄拘束を継続することによつて達せられた矯正教育の効果が、出院後の適切な処遇段階を欠くことにより、爾後において大幅に獄殺されるに至る場合も少なからずありうるのであつて、収容継続決定の時点においてこのような事態が相当程度予想されるにもかかわらず、なおその期間を定めるにあたつて出院後の処遇を全く考慮しないものとすれば、少年院における矯正教育の効果的な実現を目的とする収容継続制度の趣旨に沿わないばかりか、かえつて、少年に対し実益に乏しい身柄拘束を更に強いることにもなつて、不当な結果を招来するものといわなければならない。従つて、不当に少年の自由を拘束することにならない限り、収容継続決定をするにあたり、仮退院後の保護観察期間をも含めて収容継続期間を定めることは許されるものと解するのが相当である。

そうすると、本件については、前記認定のように、本人の院内成績が順調に経過すれば、昭和四一年四月上旬中には仮退院が許されることが予測されるが、本人の資質などからみて、仮退院後も多少の期間本人に対する適切な専門的指導ないし援護を施すことが必要であり、そのための期間をも含めて収容継続期間を定めるのが相当であると思料される。そして、前記認定の諸事実に照らすと、本件収容継続期間は、本人に対する収容期間満了日の翌日である昭和四〇年一〇月二四日から起算して向う八ヵ月間、すなわち昭和四一年六月二三日までとするのが相当である。

よつて、少年院法第一一条第四項に則り、主文のとおり決定する。

(裁判官 谷村允裕)

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