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鹿児島家庭裁判所 昭和41年(少イ)3号 判決 1967年3月13日

被告人 三光自動車株式会社

右代表取締役 江夏則吉

木場茂

主文

被告人三光自動車株式会社を罰金四万円に

被告人木場茂を罰金三万円に

各処する。

被告人木場茂に対する右罰金を完納することができないときは、金一、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

本件公訴事実中、○賀○晴に対する昭和四一年一月三一日および同年三月八日の各時間外労働の点、○田○美に対する昭和四〇年一〇月一日の時間外労働の点、遠○諭に対する同年一一月二二日、昭和四一年一月一九日、同年六月一七日、同年七月一日、同月一六日、同月二七日、同月二八日、同年八月三日の各時間外労働の点、○猶○一に対する昭和四〇年一二月一五日、昭和四一年五月二〇日、同年六月一七日の各時間外労働および同年三月一三日の休日労働の点、○高○夫に対する同年五月二八日、同年八月三日の各時間外労働の点、○川○郎に対する同年六月二九日の時間外労働の点につき、被告人両名はいずれも無罪。

理由

(罪となる事実)

被告人三光自動車株式会社(代表取締役江夏則吉)は、鹿児島市松原町二番九号に本店を置き、建設機械車輛等の販売、修理を業とするもの、被告人木場茂は同市字宿町三一四番地一二号所在の同会社のサービス工場に工場長として勤務し、同工場の労働者に関する事項を掌理し、同事項について、同会社のために行為をなす使用者であるが、被告人木場茂は、同会社の事業に関し、

第一  一週間の労働時間の四八時間を超えず、かつ、一週間のうち一日の労働時間を四時間以内に短縮する場合でないのに、別紙時間外労働違反一覧表記載のとおり、昭和四〇年九月一日から昭和四一年八月二〇日までの間前記工場において、満一五歳以上で満一八歳に満たない年少労働者である○賀○晴(昭和二三年三月二六日生)、○田○美(昭和二二年一〇月一八日生)、遠○諭(昭和二五年三月一六日生)、○猶○一(昭和二三年七月二四日生)、○田○久(昭和二四年五月一一日生)、○高○夫(昭和二六年一月二八日生)、○川○郎(昭和二五年七月八日生)の七名に対し、それぞれ一日につき所定の労働時間を超えること一六分ないし一〇時間合計一、二九二時間四一分の時間外労働をさせ、

第二  決定の除外事由がないのに、別紙休日労働違反一覧表記載のとおり、昭和四〇年九月五日から昭和四一年七月三一日までの間前記工場において、満一五歳以上で満一八歳に満たない年少労働者である前記○賀○晴、○田○美、遠○諭、○猶○一、○田○久、○高○夫、○川○郎の七名に対し、毎週少なくとも一回の休日を与えないで一ヶ月につき一日ないし四日合計六〇日の休日労働をさせ、

たものである。

(証拠の標目)(編省略)

(法令の適用)

被告人木場茂の判示所為中、判示第一の各所為は労働基準法一一九条一号、六〇条三項に、判示第二の各所為は、同法一一九条一号、三五条(以上につきいずれも罰金等臨時措置法二条一項をも適用)に各該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるからいずれも所定刑中罰金刑を選択し、同法四八条二項によりその罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金三万〇、〇〇〇円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金一、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、また、被告人三光自動車株式会社については判示第一の各所為は労働基準法一二一条一項、一一九条一号、六〇条三項に、判示第二の各所為は同法一二一条一項、一一九条一号、三五条(以上につきいずれも罰金等臨時措置法二条一項をも適用)に各該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により所定の罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金四万〇、〇〇〇円に処することとする。

なお、本件公訴事実中、○賀○晴に対する昭和四一年一月三一日および同年三月八日の各時間外労働、○田○美に対する昭和四〇年一〇月一日の時間外労働、遠○諭に対する同年一一月二二日、昭和四一年一月一九日および同年六月一七日の各時間外労働、○猶○一に対する昭和四〇年一二月一五日、昭和四一年五月二〇日の各時間外労働および同年三月一三日の休日労働の各事実はいずれもこれを認めるに足る証拠がなく、結局、犯罪の証明がないものといわざるを得ない。

また、本件公訴事実中、遠○諭に対する昭和四一年七月一日、同月一六日、同月二七日、同月二八日、同年八月三日の各時間外労働、○猶○一に対する同年六月一七日の時間外労働、○高○夫に対する同年五月二八日、同年八月三日の各時間外労働、○川○郎に対する同年六月二九日の時間外労働の各事実は、いずれも証拠によりこれを認めることができるが、これらの時間外労働時間は二分ないし一二分というものであるところ、もとより、労働者が労働時間の終了と同時に一切の作業から解放されることは望ましいことではあるが作業を終了するについては、作業に或る程度の区切りをつけたり、或いは後片付けその他の附随的作業が不可避とされる場合もあり、しかもその所要時間は必ずしも一定しているとは限らないのであるから、多少の時間のずれは作業の性質上已むを得ないところであつて、労働時間を超えることがあつても、それが僅か一〇分程度の短時間のものは、社会一般に許容されるべきであり、これを捉えて時間外労働として処罰することは相当でないと解される。したがつて右公訴事実はいずれも違法性がなく罪にならないものというべきである。

以上の次第であるから、主文第三項掲記の各公訴事実については刑事訴訟法三三六条により無罪の言渡しをすることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 小野幹雄)

別紙

年少者時間外労働違反一覧表

年少者休日労働違反一覧表

(編省略)

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